秋の味覚「ブドウ」

HEALTH

2023.10.12

薬学博士 池上文雄先生に教わる、旬の食材の知られざるパワー。
身近な食べものの歴史や栄養、効果・効能を知って日々のインナーケアに役立てましょう!

第25回は「ブドウ(葡萄)」です。

 

 

 

生食、レーズンにワインと多彩な果実「ブドウ」。

アジア西部地方原産のブドウ科の落葉つる性低木で、我が国へは奈良時代にシルクロードを経て中国から伝わったとされています。和名の葡萄は、今のウズベキスタンのフェルガナ語にあったBudawに基づく音訳字といわれています。

 

栽培化の歴史は古く、紀元前3000年頃には原産地のコーカサス地方やカスピ海沿岸で栽培が始まったらしく、壁画などにその様子が示されています。また、ワインの醸造も始まり、メソポタミア文明や古代エジプトにおいてもワインは珍重されていました。

 

 

 

 

我が国での栽培の歴史は、鎌倉時代初期に甲斐国勝沼(現在の山梨県甲州市)で中国から輸入された種が自生化した甲州種の栽培が始められ、明治時代に入ると欧米から新品種が次々と導入されるようになりました。かつてはデラウェアが主流でしたが、新品種の開発と栽培化によって、現在、最も栽培されているのは巨峰、ピオーネ、シャインマスカットなどの品種です。

 

果汁には水分87%を含む他、転化糖、ビタミンB1・C、酒石酸、カリウム、カルシウム、ロイシン、チロシン、レシチン、ケルセチン、ホウ酸などを含みます。果皮にはシアニジン、デルフィニジンなどのポリフェノール、種子にはプロアントシアニジン、リノール酸、ステアリン酸などが含まれます。

 

 

シャインマスカット

 

生食されるほか、皮ごと乾燥させてレーズンに、また、ワインやブランデーなどのアルコール飲料、ジュース、ジャム、ゼリーなどの原料となります。
世界的にはワイン原料としての利用が主で、ワインを原料とした酢(ワインビネガー)も製造されています。赤ワインは興奮性飲料として諸種の衰弱や虚弱症に用い、白ワインは飲料のほか製剤原料となります。
イタリアには古くから「良いワインは良い血をつくる」という諺があります。ワインが健康に良いという意味ですが、アルコールとともにブドウに含まれているポリフェノールの効用によるところが大きいのでしょう。

 

 

 

果実は、食欲減退、低血圧、不眠症、冷え症などに効果的です。
主成分のブドウ糖、果糖は疲労回復に効果があり、また直接脳の栄養源となり、集中力を高めてくれます。
赤紫色の果皮に含まれるアントシアニン類には強い抗酸化作用があり、がんや動脈硬化予防、視力回復の効果があります。
ブドウ特有のポリフェノールのレスベラトロールは生体防御物質で、アンチエイジングや食物アレルギーの発症を抑える効果が確認されています。ポリフェノールを効率よく摂るには皮ごと食べるのもお勧めです。
レーズンにはカルシウムやマグネシウムも豊富で、種子は健康食品などの原料となります。

品種や産地によって収穫時期がずれますが、品質的に安定して生でおいしい食べ頃は8~10月初旬です。

 

 

ルビーロマン

 

 

いかがでしたでしょうか。

みずみずしい旬のぶどうをいただいて、秋を感じてみてくださいね。

 

 

 

 

 

■旬の食材で薬食ライフ 過去の記事

 

第1回「南瓜(カボチャ)編」
第2回「栗(クリ)」編
第3回「山芋(ヤマノイモ)」編
第4回「大根(ダイコン)」編
第5回「葱(ネギ)」編
第6回「白菜(ハクサイ)」編
第7回「苺(イチゴ)」編
第8回「独活(ウド)」編
第9回「アスパラガス」編
第10回「キャベツ」編
第11回「ミョウガ(茗荷)」編
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第13回「梨(ナシ)」編
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第17回「小豆(アズキ)」編
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第19回「菜花(ナバナ)」編
第20回「蕗(フキ)」編
第21回「筍(タケノコ)」編

第22回「セロリ」編

第23回「ジャガイモ」編

第24回「ナス」編