春の訪れを告げる野菜「菜花」
HEALTH
2023.03.22
薬学博士 池上文雄先生に教わる、旬の食材の知られざるパワー。
身近な食べものの歴史や栄養、効果・効能を知って日々のインナーケアに役立てましょう!
第19回は「菜花(ナバナ)」です。
菜花は地中海沿岸が原産地とされるアブラナ科の野菜です。
春が旬の野菜で、市場には12月~4月頃に多く出回ります。
特有のほろ苦さがあり、茹でると甘味が出てお浸しや和え物などにするとおいしい食材です。
【菜花の歴史】
菜花は、若くてやわらかい花茎や葉、つぼみを食用にします。
日本には奈良時代以前には伝来し、食用とされていたと推定されています。
16世紀にはナタネ油を採るために栽培も行われていたようで、江戸時代には照明などの用途にナタネ油が使われていました。
明治時代になると西洋種が導入され、昭和に入ると食用としての品種改良が進み、現在では広く食べられています。
流通している菜花の多くは品種改良されたもので、和種(在来)と西洋種の2タイプに分けられます。
和種は花茎とつぼみと葉を利用し、和種に比べて苦味が少なく甘味がある西洋種はおもに花茎と葉を食べます。
一般的に菜の花というと、春に咲く黄色い花を思い浮かべるかと思いますが、実は菜の花は1種だけを限定する名称ではなく、アブラナ科の黄色い花の総称です。
菜の花には観賞用のほか、菜種油用のナタネ、食用の菜花があり、それぞれ品種が異なります。
【栄養と効果効能】
菜花は和種、西洋種ともにβ-カロテンの含有量が多く、骨の健康維持に欠かせないカルシウムやビタミンKも豊富に含みます。
β-カロテンは体内でビタミンAに変換されて皮膚や粘膜を保護し、活性酸素を除去するなどの働きがあり、免疫力を高めて風邪やがん予防などに効果があるといわれています。
また造血作用のある葉酸や整腸作用のある食物繊維も多く含まれるので貧血や便秘予防によく、高血圧予防によいカリウムも多く含みます。
さらに美容によいビタミンCも多く、さまざまな栄養素を豊富に含む優れた野菜です。
【美味しい菜花の選び方・食べ方】
葉と茎がやわらかくて張りがあり、切り口がみずみずしく、つぼみが開いておらず小さく締まっているものが良品です。
鮮度が落ちて乾燥すると切り口が白っぽくなり空洞ができます。一般的に花が開いたものは苦味が強くなり食感も悪くなるので、花が咲く直前のものを選ぶとよいでしょう。
β-カロテンが豊富なので、油で炒めると効率よく摂取できます。炒め物、お浸し、和え物、揚げ物、漬け物、汁の実、パスタなどに向きます。
アクが気になるようなら塩をひとつまみ入れた熱湯でサッと茹でて炒め物に、冷水に取って水気を切ってからお浸しなどにするのも良いですね。
茹でるときは、茎の太い部分とやわらかい葉の部分を分けて、先に茎からお鍋に入れると均等に加熱できます。
少し歯ごたえが残る固さになるように茹でるのがおすすめです。
いかがだったでしょうか。
春の訪れを感じさせてくれる菜花を、ぜひ食卓に取り入れてみてくださいね。
■旬の食材で薬食ライフ 過去の記事
第1回「南瓜(カボチャ)編」
第2回「栗(クリ)」編
第3回「山芋(ヤマノイモ)」編
第4回「大根(ダイコン)」編
第5回「葱(ネギ)」編
第6回「白菜(ハクサイ)」編
第7回「苺(イチゴ)」編
第8回「独活(ウド)」編
第9回「アスパラガス」編
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