海外ではハスも食べる?冬が旬の「レンコン」パワー

HEALTH

2023.03.03

薬学博士 池上文雄先生に教わる、旬の食材の知られざるパワー。
身近な食べものの歴史や栄養、効果・効能を知って日々のインナーケアに役立てましょう!第18回は「ハス(蓮)」です。

 

 

ハス(蓮)はインド原産のハス科の大型の水生多年草で、主に熱帯アジアなどに分布し、日本には有史以前に渡来していたとされています。古くから中国や東南アジアで食用、薬用などとして湿地で栽培されていて、夏に白から淡紅色の花が咲きます。

 

ハスの種子の寿命は長く、約2000年前の弥生時代のハスの実(種子)3粒を、大賀一郎博士が千葉市検見川下流の湿地帯地下泥炭層から発見して栽培し、1粒が発芽して開花に成功した大賀ハスは有名です。

 

大賀ハス

 

現在では、多くの地域で食用ハスや観賞用の小型のハスなど300品種以上が栽培されています。和名は種子の入っている花托が蜂の巣に似ているためにハチスといったことに由来し、英名のロータスはギリシャ語由来です。

 

種子にはデンプン、タンパク質、チアミンを主とするビタミンB群、マンガン、リンなどの多くのミネラル、オリゴ糖のラフィノース、脂肪などが含まれています。

根茎(蓮根)には粘液質の糖タンパク質、タンニン、不溶性の食物繊維やビタミンCなどが豊富に含まれています。

 

 

中国古医書の『神農本草経』に「補中を主り、神を養い、気力を益す」とあり、種子(蓮肉:れんにく)は栄養を補い、利水の効能があるので、漢方では精神不安、排尿障害、下痢、食欲不振などに用いられます。

一般には滋養強壮薬として、また、のぼせや口渇を除く薬膳料理に用いられます。

 

 

民間療法では、滋養強壮に乾燥した種子15~20粒を1日量としてフライパンで炒り、3回に分けて食間に食べます。

根茎を細かく刻んだもの20gを1日量として400mlの水で約半量になるまで煎じて3回に分けて食後に服用すると、下痢に効果があります。

扁桃炎、口内炎、歯周病などには、この煎じ液を冷ましたものでうがいをします。

 

 

種子は中国や台湾などでは中華料理の材料、餡にして月餅などの菓子に加工され、また甘納豆や汁粉などとして食べられていて、食文化に欠かせない食品です。中国ではデンプンは乳幼児の栄養補給食品としてよく用いられています。

 

日本ではハスの種子を食べる習慣はあまりありませんが、根茎をレンコン(蓮根)といって食用にし、各地の池や水田などで栽培され、特に茨城県や徳島県は主産地となっています。

 

 

 

切ると糸を引きますが、これは糖タンパク質によるものです。また、切り口が黒ずむのはアクの成分であるタンニンによるものです。

炒め物や煮物から揚げ物、 薄く切ってさっと茹でて酢の物やサラダにすればたくさん食べられます。

 

 

いかがだったでしょうか。

綺麗な花を咲かせるだけでなく、美味しくて栄養満点なので、ぜひ取り入れてみてくださいね。

 

 

 

■旬の食材で薬食ライフ 過去の記事

第1回「南瓜(カボチャ)編」
第2回「栗(クリ)」編
第3回「山芋(ヤマノイモ)」編
第4回「大根(ダイコン)」編
第5回「葱(ネギ)」編
第6回「白菜(ハクサイ)」編
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