春を感じる山菜「フキ」

HEALTH

2023.04.21

薬学博士 池上文雄先生に教わる、旬の食材の知られざるパワー。
身近な食べものの歴史や栄養、効果・効能を知って日々のインナーケアに役立てましょう!第20回は「フキ()」です。

 

 

春が旬のフキは、日本特産の野草です。

北海道から沖縄、中国、朝鮮半島に分布し、水が豊富な低地から亜高山の日陰の草地、道端などに群生するキク科の雌雄異株の多年草です。

近縁種はアフリカ大陸とユーラシア大陸に広く分布し、ハーブとして利用されています。

 

 

私たちにとって冬は厳しく冷たいものですが、それに耐え、やがてまろやかな春の温もりと日差しを感じると、土の中を動き出すフキノトウに本当の自然を見る思いがします。

 

【フキの歴史】

平安時代の『和名抄(わみょうしょう)』には、漢名の蕗をフフキと呼んで、「葉は葵に似て円く広く、その茎は煮て食うことができる」と書かれていることから、私たちが知っているフキはフフキが詰まった言葉だということが分かります。

現在、国内で栽培種として市場に出回っている多くのフキは愛知早生という品種です。このほか、関東地方以北には2mほどにも伸びる秋田蕗があります。

フキは「富貴」に通じ、縁起のいい植物として親しまれており、バッケ、バンケ、バッキャなど多くの方名があります。

 

 

【栄養と効果効能】

根茎にはペタシン、地上部には精油、フラボノイドのケルセチンやケンフェロール、セスキテルペノイドのフキノリドなどが含まれます。

また地上部にはビタミン類やカルシウムなどのミネラルのほか、フキノン、フキノール酸、クロロゲン酸といったポリフェノールが含まれています。

近年は、地上部から抽出したエキスがアレルギー性鼻炎に効果があるとして、注目されています。

 

中国や日本では、民間療法として、若い花茎や葉を風邪や喘息などのときに解熱、鎮咳、去痰薬として使用します。また、苦味健胃薬として胃痛などに煎じて飲み、みそ和えにして食べたりして用います。

根茎は煎じて扁桃炎などに用いて、すり傷、切り傷、軽い火傷や虫刺されには生の葉をつき潰した汁を傷口につけます。

 

【美味しいフキの選び方・食べ方】

 

葉柄は「ふき」、花茎は「ふきのとう」と呼ばれ、蕾のうちの花茎あるいは葉柄は香りと苦味があります。

独特の香りがある花茎や葉柄、葉には、肝毒性の強いペタシテニン(別名:フキノトウキシン)が若干含まれているため、アク抜きが必要です。

天ぷらや煮物、ふきのとうみそ、佃煮になどにするのがおすすめです。

 

観賞用として庭などに植えられる同じキク科の常緑多年草のツワブキ(石蕗)の葉柄や蕾、花も、フキのように佃煮や和え物、きんぴら、天ぷらなどにして食べることができます。

 

いかがだったでしょうか。

栄養満点の春の山菜「フキ」を食卓に取り入れて、春の訪れを楽しんでくださいね。

 

 

 

■旬の食材で薬食ライフ 過去の記事

第1回「南瓜(カボチャ)編」
第2回「栗(クリ)」編
第3回「山芋(ヤマノイモ)」編
第4回「大根(ダイコン)」編
第5回「葱(ネギ)」編
第6回「白菜(ハクサイ)」編
第7回「苺(イチゴ)」編
第8回「独活(ウド)」編
第9回「アスパラガス」編
第10回「キャベツ」編
第11回「ミョウガ(茗荷)」編
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第13回「梨(ナシ)」編
第14回「椎茸(シイタケ)」編
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第16回「ほうれん草(菠薐草)」編
第17回「小豆(アズキ)」編
第18回「蓮・蓮根(ハス・レンコン)」編
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