カロリー控えめの夏野菜「ナス」
HEALTH
2023.08.29
薬学博士 池上文雄先生に教わる、旬の食材の知られざるパワー。
身近な食べものの歴史や栄養、効果・効能を知って日々のインナーケアに役立てましょう!
第24回は「茄子」です。
インド東部原産といわれるナス科の野菜で、温帯では一年草、熱帯では多年草です。
日本には中国から伝来し、奈良時代には既に栽培が行われていました。
和名は、夏に実がなるので「夏実」が訛って「なすび」と呼ばれたとする説もあります。当時は貴重な野菜でしたが、江戸時代頃より広く栽培されるようになり、今や庶民的な野菜となりました。
世界の各地で1,000種類以上といわれる独自の品種が育てられています。
日本では180種類を超える品種が栽培されていますが、南方ほど長実または大長実品種、本州中間地では中長品種、北方ほど民田のような小実品種が栽培されます。
近年では、食文化の均一化やF1品種の登場により野菜炒めや焼き茄子など、さまざまな料理に利用しやすい中長品種が全国的に流通しています。
国内で栽培される栽培品種のほとんどは果皮が紫色または黒紫色ですが、ヨーロッパやアメリカなどでは白色や黄緑色、縞模様の品種も広く栽培されています。葉とへたには棘があり、葉には毛が生えていますが、最近では、収穫の作業性向上や実に傷がつくという理由から棘の無い品種も開発されています。
果実の93%は水分と糖質であり、他の野菜と比べると栄養価やカロリーが特に多い方ではなく、夏野菜の代表的なトマトとの成分を比較しても、脂質、タンパク質、ビタミン類、ミネラルなどの含有率の低い野菜です。しかし食物繊維は比較的多く含まれています。
抗酸化作用があるナスニンやコリンという機能性成分を含むので、血圧やコレステロール値を下げる、動脈硬化を防ぐ、胃液の分泌を促す、肝臓の働きを良くするなどの効果があります。
紫の色素の多いへたや皮の黒焼き粉末は解毒薬となり、食中毒、腹痛や蕁麻疹に服用し、皮膚病や乳腺炎などに外用します。
旬は夏から初秋。
品種によって形も色も多彩で、様々な食べ方があります。未熟で果肉や種子が柔らかいうちに収穫し、焼く、煮る、揚げるなどの方法で調理して食べます。
淡白な味で他の食材とも合せやすく、皮も薄く柔らかくて油との相性が良いので野菜炒めなどで食べられます。また、ナスは古くからフグと相性が良いとされます。
「秋茄子は嫁に食わすな」という言葉は、嫁を憎む姑の心境を示しているという説がある一方で、『養生訓』にある「茄子は性寒利、多食すれば必ず腹痛下痢す。女人はよく子宮を傷ふ」から、お嫁さんの体を案じた言葉という説もあります。
秋が近づくと色が次第に濃くなりますが、紫の色素は毒性が強く、不妊の原因になるといわれます。ただ、表面を焼くと色素は分解されて姙娠を妨げる作用はなくなります。
食べ過ぎには注意が必要ですが、食物繊維がたっぷり摂れてカロリー控えめ、機能性成分を含むナスはインナーケアに役立てたい夏野菜。
旬のこの時期に色々な料理にアレンジして、楽しみながらいただきましょう。
■旬の食材で薬食ライフ 過去の記事
第1回「南瓜(カボチャ)編」
第2回「栗(クリ)」編
第3回「山芋(ヤマノイモ)」編
第4回「大根(ダイコン)」編
第5回「葱(ネギ)」編
第6回「白菜(ハクサイ)」編
第7回「苺(イチゴ)」編
第8回「独活(ウド)」編
第9回「アスパラガス」編
第10回「キャベツ」編
第11回「ミョウガ(茗荷)」編
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