栄養豊富な「ほうれん草」で冬支度
GOURMET
2022.12.27
薬学博士 池上文雄先生に教わる、旬の食材の知られざるパワー。
身近な食べものの歴史や栄養、効果・効能を知って日々のインナーケアに役立てましょう!
第16回は「ほうれん草(菠薐草)」です。
【ほうれん草の歴史】
ほうれん草は、ヒユ科の雌雄異株の一年草です。原産地は中央アジアから西アジア、カスピ海南西部近辺と見られ、初めて栽培されたのはペルシャ地方(現在のイラン)だったと考えられています。
ヨーロッパには中世末期にアラブから持ち込まれ、東アジアにはシルクロードを通って広まりました。中国では唐代に「菠薐(ホリン)国」(現在のネパールもしくはペルシャ)から伝わり、日本には江戸時代初期(17世紀)に渡来し、転訛して「ホウレン」となりました。
19世紀後半に西洋種が持ち込まれ、我が国では西洋種(葉が厚く丸みを帯びる)と東洋種(葉が薄く切り込みが多くて根元が赤い)の2種類が栽培されてきましたが、最近は両者の間の一代雑種品種(丸葉系・剣葉系)が開発されて、広く普及するようになりました。
西洋ほうれん草
東洋種は伝統野菜として栽培される品種も多く、山形赤根ほうれんそうなど、地域に根差した健康食材としても脚光を浴びています。
東洋ほうれん草
冷涼な地域もしくは冷涼な季節に栽培されることが多いです。冷え込むと軟らかくなり、味がより良くなるため、ほうれん草が美味しくなる時季は冬です。
収穫前に冷温にさらすこともしばしば行われ、これらの処理は「寒締め」と呼ばれています。寒締めを行ったホウレンソウは、低温ストレスにより糖度の上昇、ビタミンC、ビタミンE、β-カロテンの濃度の上昇が起こるのでより美味しくなります。
【栄養と効果効能】
ほうれん草は野菜の中でも栄養価が高く、β-カロテン、鉄、カリウム、葉緑素、葉酸、ビタミンA・B・Cなどが豊富で、カロテノイドのルテイン、シュウ酸なども多く含まれています。
β-カロテンは老化を促進する活性酸素を除去する作用があります。造血作用のある葉酸は鉄の吸収を促進するため、ほうれん草を食べると効率のよい鉄分の摂取に繋がり、貧血予防になります。スピナコシド類とバセラサポニン類には小腸でのグルコースの吸収抑制等による血糖値上昇抑制活性が認められています。
なお、シュウ酸は、多量に摂取するとカルシウムの吸収を阻害したり、腎臓や尿路にシュウ酸カルシウムの結石を引き起こすことがあります。そのため、削り節や牛乳などのカルシウムを多く含む食品と同時に摂取したり、多量の水で茹でこぼすなどの調理法の工夫が必要です。
最近では低カリウムのホウレンソウも作出され、カリウムが気になる人も生のまま食べられるようです。
美味しいほうれん草の選ぶ際のポイントは、葉が肉厚で、葉先がピンとして全体に緑色が濃く、根元の赤みが鮮やかであることです。
東洋種はお浸し向き、西洋種であれば炒め物やソテーにするのがおすすめです。
生食のサラダ用ほうれん草やサボイほうれん草などがありますが、アクが強いので下茹でなどの加熱調理を行ってくださいね。
いかがだったでしょうか。
色鮮やかなほうれん草を、ぜひ冬場の食卓に取り入れてみてくださいね。
■旬の食材で薬食ライフ 過去の記事
第1回「南瓜(カボチャ)編」
第2回「栗(クリ)」編
第3回「山芋(ヤマノイモ)」編
第4回「大根(ダイコン)」編
第5回「葱(ネギ)」編
第6回「白菜(ハクサイ)」編
第7回「苺(イチゴ)」編
第8回「独活(ウド)」編
第9回「アスパラガス」編
第10回「キャベツ」編
第11回「ミョウガ(茗荷)」編
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第15回「柿(カキ)」編