風邪や老化の防止にも!意外な「柿」のパワー

HEALTH

2022.11.26

薬学博士 池上文雄先生に教わる、旬の食材の知られざるパワー。
身近な食べものの歴史や栄養、効果・効能を知って日々のインナーケアに役立てましょう!
第15回は「柿(カキ)」です。

 

 

 

 

「柿くえば鐘がなるなり法隆寺」「柿が赤くなれば医者は青くなる」など、古くから私たちの生活と強く結びつき、柿は日本人の心のふるさとを象徴する果物ともいえます。
和名は、赤き(赤木)が変化して「カキ」になったものらしく、実も葉も赤いということからのようです。

 

【柿の歴史】

柿は古い時代に中国から朝鮮半島を経て渡来し、食用として品種改良されたカキノキ科の落葉高木で、北海道を除いた全土で広く栽培されています。
甘柿の富有柿や次郎柿、渋柿の刀根早生(とねわせ)柿や平核無(ひらたねなし)柿などが有名ですが、今日では我が国を代表する果樹とされ、ヨーロッパでも「Kaki」という名で売られています。

 

 

 

【栄養と効果効能】

果実(生、干し柿)には炭水化物、β-カロテン、ビタミンC、カリウム、マンガンなどが含まれます。干し柿はβ-カロテンや食物繊維が豊富で風邪やがんの予防、老化防止に役立ちます。
また、吐血や下血に食べますが、子供の軟便止めにも効を奏し、湯に戻して柔らかくしたものを1日1個食べれば3日ほどでよくなります。
果実にはアルコールの分解を促進するタンニンがあるので、二日酔いの際は果実を生食するとよいでしょう。

 

干し柿は老化対策にも効果的

 

果実のへた(柿蒂:してい)は横隔膜のけいれんを鎮静する効能があるので、しゃっくり、咳、痰に効き、民間療法では、柿蒂8gとショウガ5gを300mLの水で半量まで煎じて服用します。
葉にはビタミンCが緑茶の数倍も含まれ、渋いタンニンも含みますので、高血圧や消化器官の潰瘍、二日酔い、虚弱体質に乾燥した葉10~20gを1日量としてお茶として飲みます。
漢方の古書には「胃を開き、腸を渋し、吐血を治し、心肺を潤し‐‐」と効能が記されていて、食用と共に薬用に用いられてきました。

 

【美味しい食べ方】

 

柿の旬は9~11月です。渋柿と甘柿がありますが、渋柿を干し柿にするとおいしく食べられます。
干すと渋味のタンニンが水に溶けないタンニンに変わって渋味が無くなり、元来含まれている甘味が勝って甘みを感じるようになります。渋抜き柿も同じで、果肉にゴマ様の黒い斑点が見られるのはタンニンの酸化物です。

 

 

干し柿では甘み(糖度)は生の甘柿の3~4倍にもなるといいます。また、100g中の栄養価を生の甘柿と比べると、ビタミンCは減りますが、ビタミンAは生の3倍近くに増えます。β-カロテンは3倍強、ミネラルのカリウムは4倍ほど、食物繊維は9倍近くも含まれています。
表面の白い粉はマンニトールという果糖の結晶でうまみのもとです。干し柿は料理の甘味料にも応用されています。

普通の干し柿は黒ずみますが、あんぽ柿は皮をむいた後、硫黄を燃やした煙でいぶして果肉の酸化を抑えて変色を防いだものです。

 

燻して酸化を抑えることで綺麗なオレンジ色を保つ「あんぽ柿」

 

 

 

どこか懐かしい秋の代表フルーツ「柿」。
意外な効果効能に驚いた方も多いのでは?

ぜひ楽しみながら食卓に取り入れてみてください。

 

 

 

■旬の食材で薬食ライフ 過去の記事

第1回「南瓜(カボチャ)編」
第2回「栗(クリ)」編
第3回「山芋(ヤマノイモ)」編
第4回「大根(ダイコン)」編
第5回「葱(ネギ)」編
第6回「白菜(ハクサイ)」編
第7回「苺(イチゴ)」編
第8回「独活(ウド)」編
第9回「アスパラガス」編
第10回「キャベツ」編
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第12回「オクラ」編
第13回「梨(ナシ)」編
第14回「椎茸(シイタケ)」編