食欲の秋も安心、ダイエットの強い味方「椎茸」
HEALTH
2022.10.08
薬学博士 池上文雄先生に教わる、旬の食材の知られざるパワー。
身近な食べものの歴史や栄養、効果・効能を知って日々のインナーケアに役立てましょう!
第14回は「椎茸(シイタケ)」です。
【椎茸の歴史】
椎茸は、北海道から九州までのほか、アジア一帯に広く分布する担子菌類のキシメジ科のキノコです。春や秋には山林のシイやコナラなどの広葉樹の枯樹、倒木、切り株などに発生し、高山では夏にも発生します。最近は人工栽培の技術が進んで、年間を通して入手できるようになりました。
東アジアでは古くから食材として利用されており、日本では江戸時代から原木栽培が始められ、マッシュルーム、フクロタケと並ぶ世界三大食用キノコです。日本を代表する食用キノコとして親しまれていて、日本料理にも中華料理にも欠かせない素材です。
【栄養と効果効能】
椎茸は多彩な生理活性成分を含んでいます。子実体(傘と柄の部分)にはエリタデニンという、椎茸特有の成分が含まれています。血中のコレステロールの低下作用や血小板凝集抑制作用があります。
また、免疫賦活や抗腫瘍作用のある多糖類のβ-グルカン(レンチナン)、紫外線に当たるとカルシウムの吸収を助けるビタミンDに変わるエルゴステロールが含まれています。ほかにもカルシウムや鉄などのミネラル、アミノ酸類、ビタミン類、食物繊維など、栄養的に不可欠な成分を多く含んだ食材です。ダイエットの強い味方になっています。
漢方では気力を益し、脾胃を健やかにし、炎症を鎮める作用があり、貧血や高血圧にも効くとされています。近年ではレンチナンに抗がん作用があることがわかり注目されています。
民間療法では風邪の咳止めや二日酔い、暑気あたりに、乾燥品1日量5~15gを煎じて服用しますが、動脈硬化の予防にも効果があります。生のもの、乾燥品のどちらもほぼ同じ効果があるので、焼く、煮るなどの加熱調理をして食べましょう。
高血圧、動脈硬化の予防には乾燥品を煎じて服用すると良いでしょう。培養菌糸体の抽出エキスは、健康食品素材として、主に免疫力強化、コレステロール低下に用いられます。
うま味成分のグアニル酸、香気は干し椎茸の方が生のものより高く、またビタミンB2は干し椎茸に多く含まれます。独特の香気は、水に戻したときに酵素が働き、レンチニン酸が分解したレンチオニンなどの環状含硫化合物の匂いです。
【美味しい食べ方】
椎茸の栽培は温度と湿度に左右されます。
春先の低温でゆっくりと成長し肉厚に育ったものは冬菇(どんこ)と呼ばれるつぼみの状態の高級品で、ダシがたっぷり出るので、煮込みやすまし汁に最適です。
これに対して高温多湿で育ったものは傘が大きく、薄く開いた状態で香信(こうしん)と呼ばれ、他の食材と味を引き立てあうのでちらし寿司や炒め物に最適です。
いかがでしたか?食欲の秋は美味しい食材が増えますが、美味しくてダイエットにもおすすめな椎茸を、ぜひ食卓に取り入れてみてくださいね。
■旬の食材で薬食ライフ 過去の記事
第1回「南瓜(カボチャ)編」
第2回「栗(クリ)」編
第3回「山芋(ヤマノイモ)」編
第4回「大根(ダイコン)」編
第5回「葱(ネギ)」編
第6回「白菜(ハクサイ)」編
第7回「苺(イチゴ)」編
第8回「独活(ウド)」編
第9回「アスパラガス」編
第10回「キャベツ」編
第11回「ミョウガ(茗荷)」編
第12回「オクラ」編
第13回「梨(ナシ)」編