秋の訪れを感じるフルーツ「梨」
HEALTH
2022.09.02
薬学博士 池上文雄先生に教わる、旬の食材の知られざるパワー。
身近な食べものの歴史や栄養、効果・効能を知って日々のインナーケアに役立てましょう!
第13回は「梨(ナシ)」です。
梨はバラ科の落葉高木で、旬は8月下旬から11月頃の、黄褐色または黄緑色の直径10~18cmの果実です。果肉は白色で甘くて果汁が多く、シャリシャリとした独特の食感が特徴的な果物です。
これはペントザンやリグニンという物質が果肉に蓄積し、石細胞(せきさいぼう)と呼ばれる細胞壁が厚くなることによるものです。
単に「梨」というと、中国を原産とし中国や朝鮮半島、台湾、日本に生育する野生種のヤマナシ(ニホンヤマナシ)を基本種とする栽培品種群の和梨(日本梨)を指します。
【梨の歴史】
我が国で梨が食べられ始めたのは弥生時代頃とされ、登呂遺跡などから多数食用にされていたとされる根拠の種子などが見つかっています。
梨は江戸時代に栽培技術が発達し、明治時代には千葉県松戸市で「二十世紀」、神奈川県川崎市で「長十郎」と呼ばれる種類の梨がそれぞれ発見され、20世紀前半はこの2種類が生産量の大半を占めるほどでした。
多くの早生種を含む優良品種が多数発見され、盛んに品種改良が行われた結果、梨の「三水」と呼ばれる幸水・新水・豊水の3品種が普及しました。
幸水梨
果皮の色から黄褐色の赤梨系と、淡黄緑色の青梨系に分けられますが、多くの品種は赤梨系で、青梨系品種は二十世紀など少数です。
ヨーロッパ原産の洋梨は明治の初めに輸入され、現在ではラ・フランスやル・レクチェなどの品種が山形や長野などで栽培されています。
ル・レクチェ
生食のほか、洋梨の果汁を発酵させた果実酒のペアサイダーや、梨ブランデーなどに利用されています。
なお、洋梨ではソルビトールと呼ばれる天然の糖アルコールによって追熟が起きます。
【栄養と効果効能】
果実は和梨・洋梨ともにビタミンをほとんど含みませんが、糖分としてショ糖、果糖、ソルビトール、ブドウ糖を含んでいます。
その他にリンゴ酸やクエン酸などの有機酸類、食物繊維、カリウム、亜鉛、プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)なども含みます。
プロテアーゼには消化を助けたり、肉料理において肉を柔らかくしたりする効果があります。
果物として食べると、リグニンやペントザンによる便秘予防、甘く冷涼感のあるソルビトールによる整腸やのどの消炎、アスパラギン酸による疲労回復や利尿、カリウムによる高血圧の予防に効果が期待できます。
民間療法では、尿道炎、膀胱炎には乾燥した葉10~15gにトウモロコシの毛10~20g、チガヤの根茎10~20gを1日量とし、500~600mLの水で約半量まで煎じ、温かいうちに服用します。
葉には美白成分と呼ばれているフェノール配糖体のアルブチン、ポリフェノールのタンニンなどが含まれています。
【美味しい食べ方】
和梨は乾燥しやすいので、ポリ袋に入れて野菜室で保存するようにしましょう。
洋梨を追熟させたい場合は、新聞紙などに包んで直射日光を避けて常温で保存すると良いですよ。
皮を剥いてそのまま食べてももちろん美味しいですが、擦りおろして焼き肉のタレに混ぜると、フルーティーな甘みが加わるのでおすすめです。
いかがでしたか?スーパーや八百屋さんで梨が並んでいるのを見ると、そろそろ秋なんだと改めて感じますよね。
みずみずしくて美味しい秋の味覚を、ぜひ食卓に取り入れてみてくださいね。
■旬の食材で薬食ライフ 過去の記事
第1回「南瓜(カボチャ)編」
第2回「栗(クリ)」編
第3回「山芋(ヤマノイモ)」編
第4回「大根(ダイコン)」編
第5回「葱(ネギ)」編
第6回「白菜(ハクサイ)」編
第7回「苺(イチゴ)」編
第8回「独活(ウド)」編
第9回「アスパラガス」編
第10回「キャベツ」編
第11回「ミョウガ(茗荷)」編
第12回「オクラ」編