旬のものをいただく「春の山菜②」
HEALTH
2024.05.05
旬の食材の恵みを享受することは、生命のエネルギーを活性化し、心身ともに健康に導くヒントとなります。中でも春から初夏にかけて楽しむことができる「山菜」は、魅力がいっぱい。
前回ご紹介をした「タラの芽」と「ノビル」に引き続き、今回の薬食ライフは「ミツバ(三葉)」と「ワラビ(蕨)」をご紹介いたします。
春の山菜②:ミツバ(三葉)とワラビ(蕨)
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野生のミツバ(池上先生撮影)
【ミツバ(三葉)】
我が国では北海道から沖縄まで広く分布し、山地の日陰に自生するセリ科の多年草です。和名は葉が三枚に分かれていることに由来し、ミツバゼリとも呼ばれます。
比較的新しい食材で、江戸時代の享保年間に東京葛飾の水元町で栽培が始まり、千葉県松戸で改良されてから関東一円に広がり、関西には明治以降に導入されたといわれます。それまでは山野に自生するものを摘み取って利用していました。近年は、野生種の持つ特有の香りが再認識されて、香りの良い山菜として好まれています。
茎葉には芳香性の精油のほか、ビタミンC、β-カロテンや鉄、カルシウムなどを含み、食用とすれば食欲増進の作用があり、また神経を鎮めて不眠症を改善します。カロテンは体内でビタミンAに変わるので、視覚や聴覚の機能を高め、免疫を強化し、がん予防や老化防止にも効果的です。
民間では、かぜの引き始めには茎葉を刻み、擦りおろした生姜を少し加えてすまし汁をつくり、熱いうちに飲んで早めに寝ると汗が出て熱も下がります。
冬から初夏が旬で、香味野菜(ハーブ)としての利用は日本と中国が主です。野生品は一般的にハウス栽培品よりも大きく香りも強く、質が堅いです。家庭菜園やプランターでも比較的簡単に栽培ができるので、一年を通して必要時に摘んで用います。近年ではいろいろな栽培法が確立され、その違いによって切りミツバ(白三葉)、根ミツバ、糸ミツバ(青三葉)に分けられます。
今日では主にハウス水耕栽培した糸ミツバが周年出荷されています。茎と葉がお浸しや和え物とされるほか、吸い物や鍋物、丼物の具としても用いられます。青汁の原料として、ニンジン、キャベツなどと一緒にして飲めば、香りもよく、ビタミン類の補給になります。
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菜園栽培のミツバ(池上先生撮影)
【ワラビ(蕨)】
ワラビ(蕨)は世界の温帯から熱帯にかけて広く分布し、我が国では北海道から南西諸島の原野や山地の日当たりの良いところに群生するコバノイシカグマ科(旧イノモトソウ科)に属するシダ植物の一種です。
春から初夏にまだ葉の開いてない新芽を採取し山菜として食用にしますが、この新芽は毒性があるため生のままでは食用にできません。食用にするための伝統的な調理方法として、熱湯(特に木灰、重曹(炭酸水素ナトリウム)を含む熱湯)を使った灰汁抜きや塩漬けによる無毒化が行われます。丁寧に灰汁抜きをした後に、お浸しや和え物、炒め物、味噌汁の具などにすると、他の野菜にはない独特な風味が味わえます。栄養成分はさほど多くはありませんが、ビタミンB2・Eや食物繊維が比較的多く含まれているため抗酸化活性が期待されて、動脈硬化などの生活習慣病の予防に役立つと考えられています。
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ワラビの群生(池上先生撮影)
根茎から採れる上質なデンプン(ワラビ粉)はわらび餅の材料となって上品な和菓子として食べられています。ただ、近年市販されているわらび餅の大半は小麦粉から作られています。
山菜ブームから人気が高まり、東京都青梅市や茨城県、山形県などでは栽培化も進んでいて、天然ワラビと生育環境が近いために自生品とほとんど見分けがつかないものが市場に出ています。
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ワラビ(池上先生撮影)
山菜特有の香りや食感が苦手な方も、ミツバとワラビでしたら癖も少なく、比較的召し上がりやすいのではないでしょうか?
次回の「薬食ライフ」も是非楽しみにしていてくださいね!
■旬の食材で薬食ライフ 過去の記事
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