旬のものをいただく「春の山菜①」

HEALTH

2024.04.07

春が訪れると、自然は新鮮な息吹を私たちにもたらしてくれます。
生命力あふれる春の山菜の香りと滋味を味わいながら、心身への効果も知って春の恵みをより楽しみたいですね。
今回の薬食ライフは「タラの芽」と「ノビル」をご紹介いたします。

 

春の山菜①:タラの芽とノビル(野蒜)

ノビルの群生(池上先生撮影)

 

【タラの芽】

 

タラノキは日本全土、朝鮮半島、中国東北部などに分布し、広葉樹林の中や林道脇など日当たりの良い山野に自生するウコギ科の落葉低木で、タラッポ、タロウノキ、トリトマラズなどの別名があります。

昔から馴染み深い植物の一つで、北海道や東北地方では春に栄養補給食物としてタラの芽を採取して食べており、胃腸の調子が悪い時には根を煎じて服用していたといわれています。

根皮や樹皮にはサポニンのα-、β-タラリン、オレアノール酸、コリン、β-シトステロールなど、葉にはトリテルペノイドのα-、β-ファトシン、オレアノール酸など、新芽には多くの油脂、タンパク質が含まれます。

漢方では、根皮や樹皮は気を補い精神を安らげ、腎を滋養する効能があるので、神経衰弱、リウマチ性関節炎、糖尿病および腎疾患などに用いられます。民間では健胃、利尿、血糖値を抑える薬として糖尿病、腎臓病などの治療と予防に用います。特に、タラ根皮の煎じたものを「たら根湯」と称し、糖尿病の妙薬とします。根皮をホワイトリカーに漬込んで造った薬用酒(タラ酒)は糖尿病滋養強壮に飲用されます。

葉が展開する前の若芽は「タラの芽」「タランボ」と呼ばれ、古くから「山菜の王様」と称されるほど人気が高く独特の香味のある山菜としてよく知られています。

旬は3~4月ですが、市場に出回っているものの多くは栽培品です。苦味や灰汁(あく)が少なく、扱いやすい食材で、天ぷらや揚げ物のほか、軽く茹でてゴマ和えやクルミ和えなどにして食べられます。

 

 

 

 

 

【ノビル(野蒜)】

 

 

ノビルは東アジアに広く分布し、北海道から沖縄までの日当たりの良い草地や土手、道端など人間の生活圏に群生しているヒガンバナ科の多年草です。和名は野に生えるヒル(蒜:ネギやニラなどネギ属の野菜の古称)という意味です。姿や臭いは小ネギやニラに似ていて、葉と地下の鱗茎は古くから食べられてきました。姿が似ている植物には、葉の断面が丸いアサツキ、葉が平らなニラがあります。

鱗茎も含めた全草には、ニンニクに似た含硫化合物などが含まれています。漢方では鱗茎は狭心症の痛み予防、食べ過ぎによる食欲不振にラッキョウと同様の効果があるといわれ、生薬名もラッキョウと同じ薤白(がいはく)です。

ノビルには胃腸を丈夫にして身体を温める効果が期待されて、民間では鱗茎の乾燥黒焼き紛末を砂糖湯で服用して強壮、鎮咳、咽頭炎に用いられます。生の全草をすり潰したものをたむしや虫刺されなどの患部に外用します。

春が旬(3~6月)の代表的な山菜の一つで、昔から「食べられる野草」扱いです。若芽を鱗茎ごと掘り起こして利用します。シャキシャキした食感の鱗茎は生でも食べられます。

味はネギやラッキョウに似ており、多少の苦味と鮮烈な辛味があります。灰汁(あく)抜きをする必要がなく、熱を加えると辛味が和らぎ、甘味が出ます。若芽は天ぷらに、葉はニラに準じて用いられ、鱗茎は酒の肴として生や湯がいて酢みそなどの味付けで食べられます。

 

 

 

山菜料理は、幼いころは苦手で大人になってから好きになったという人も少なくないようです。

味覚の変化もさることながら、心身への効果を無意識に感じ取っているからかも知れませんね。

次回薬食ライフも「春の山菜 その2」をお届けします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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第3回「山芋(ヤマノイモ)」編
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第6回「白菜(ハクサイ)」編
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