爽やかな香りが食欲をそそる!夏の薬味「ミョウガ」

HEALTH

2022.07.06

薬学博士 池上文雄先生に教わる、旬の食材の知られざるパワー。
身近な食べものの歴史や栄養、効果・効能を知って日々のインナーケアに役立てましょう!
第11回は「ミョウガ(茗荷)」です。

 

ミョウガ(茗荷)は、生姜などと共に花も茎も香味野菜として日本では古くから親しまれていますが、食用に栽培しているのは日本だけです。

 

日本原産のショウガ科の多年草で、夏から秋にかけて根茎から多数の紫がかった褐色の苞葉のある花穂(かすい)をつけます。これがいわゆる「ミョウガの子」で食用になりますが、食用にされるものはほぼ栽培品です。
春に根茎から伸びる若芽も「ミョウガタケ」の名で食用にされます。

 

 

食用には初夏~夏が旬ですが、薬用には根茎を必要時に掘り採って生または陰干しにして用います。葉茎は9~10月に採取して陰干し、花穂は夏から秋に採取して生で用います。

 

 

【ミョウガの歴史】

 

平安時代の草本書『本草和名』に記載されるほどに日本人好みの薬草で、江戸時代の農業書には「各家で必ず植えられている」と書かれています。

古くは煩悩を忘れる妙薬、悟りを開く妙薬であるといわれていましたが、江戸時代になってからは物忘れの妙薬として伝えられるようになりました。
ミョウガを食べると物忘れしやすくなるという江戸時代の落語「茗荷の宿」は今も私たちを楽しませてくれますが、物忘れするというのは迷信で科学的根拠はありません。

近年の研究では、ミョウガを食べると香り成分が血流を良くして認知症の予防になるといわれています。

 

【栄養と効果効能】
根茎にはピネンやガラナールA、ガラノラクトンなどを含みます。
花穂には、フェランドレン、カリオフィレンなどのほか、ガラナールA・B、ビタミン類やミネラルなどを含んでいます。花穂の特有の香り成分は食欲を増進し、集中力や記憶力を増やすとされています。

 

また、発汗して体温を下げる効果がありますので、健胃や食欲不振に花穂を刻んで薬味などとして食べます。消化促進作用もあるため、食欲の落ちる暑い季節にピッタリの食材です。

 

根茎をすり下ろし、お湯で2倍に薄めたもので温湿布すると目の疲れに良く、乾燥した根茎30gを500mLの水で約半量になるまで煎じて飲むと口内炎や生理痛などに良いとされています。冬のしもやけには煎液で患部を温湿布します。
生葉や茎を粗く刻み、布袋に入れて浴槽に浮かべて入浴すれば、香りもよく湯冷めしにくくて体が温まるので、神経痛やリウマチ、肩こり、腰痛、冷え症などに効きます。

 

 

【美味しい食べ方】

ミョウガはアクがあるので、生で食べるときは水にさらしてアク抜きをしましょう。ですが、長時間水にさらすと香りが飛んでしまうので気を付けましょう。また、食べる直前に刻むことで、香りをより楽しむことができますよ。

 

古くから薬味や漬物として食べられていますが、天ぷらや熱湯にくぐらせて酢みそ和えにしても美味しいです。暑い夏には、千切りにしてそうめんに入れたり、ショウガと青ジソとを合わせてサラダにして食べるのもオススメです。輪切りにして油で炒め、みそ、みりん、砂糖を加えたミョウガみそは非常に美味しい一品が完成しますよ。

 

 

いかがだったでしょうか。
ミョウガは薬味としてだけでなく、実はサラダやおかずにもなる万能食材なのです。
今年は猛暑が続きそうですので、ミョウガパワーで夏を乗り切りましょう!

 

 

 

■旬の食材で薬食ライフ 過去の記事

第1回「南瓜(カボチャ)編」
第2回「栗(クリ)」編
第3回「山芋(ヤマノイモ)」編
第4回「大根(ダイコン)」編
第5回「葱(ネギ)」編
第6回「白菜(ハクサイ)」編
第7回「苺(イチゴ)」編
第8回「独活(ウド)」編
第9回「アスパラガス」編
第10回「キャベツ」編