紀元前から重宝されてきた「タマネギ」

HEALTH

2024.03.28

薬学博士 池上文雄先生に教わる、旬の食材の知られざるパワー。
身近な食べものの歴史や栄養、効果・効能を知って日々のインナーケアに役立てましょう!

第29回は「タマネギ」です。

 

 

 

【タマネギの歴史】

 

中央アジアの原産といわれるヒガンバナ科(旧ユリ科)の多年草です。エジプトの墓からタマネギの遺物が発見され、また古い建物の壁画にも無数の絵が描かれています。

今から五千年以上も前に広く普及していたことを示しています。

紀元前のエジプト王朝時代から栽培され、その後ヨーロッパ、アメリカに伝えられました。

アジアへの普及は遅く、我が国に渡来して食用として栽培が始まったのは明治時代に入ってからです。

現在では北海道、佐賀県、兵庫県などが主産地です。

 

 

 

【タマネギの栄養成分とその効果】

 

鱗茎には揮発性の硫化アリル(アリシン)、ケルセチン、グルタチオン、オリゴ糖などが含まれ、またカルシウム、リン、鉄などのミネラル、ビタミン類も含まれていて、タマネギは生活習慣病予防の特効薬ともいわれます。

切った時に目に染みる、あのツンとした成分の硫化アリルは、血液をサラサラにしてくれるため高血圧、動脈硬化などに効果があり、血糖値の上昇を抑える働きもあるので中性脂肪やコレステロールが高い人、糖尿病の予防にも良い食材です。

 

 

また、胃液分泌の促進による食欲増進、ビタミンB1の吸収促進による疲労回復にも良いといわれます。

漢方では胡葱(こそう)といい、胃腸を温めて気の流れを良くする効能があるので、消化を促進し、さらに利尿作用もあるのでむくみに有効とされています。

 

【民間療法として】

 

民間では、外皮をむいて中の多肉の部分を用い、また茶色い外皮も薬用とします。かぜの引き始めなど熱があるときには、鱗茎を細かく刻んでおろし生姜を加え、しょう油などで調味して熱いお湯で溶いて飲みます。

寝る前に飲むと発汗を促し解熱効果があります。咳が出るときは細かく刻んだタマネギをガーゼに包んで首に巻いて冷湿布するか絞った汁を水で薄めてうがいしても効果があります。タマネギのスライスを置いておくと寝つきが良くなるといわれています。

 

 

 

初夏~夏が旬ですが、季節ごとに産地の異なるものが出回っています。加熱すると甘味が出て、料理の味をまろやかにし、特に洋風料理にはオニオンとも呼んで欠かせない素材です。

生タマネギのスライスを食べるのがブームになっていますが、硫化アリルは水溶性の成分なので水に晒さないことが重要です。みそ汁の具材などとして加熱しても、その成分は壊れないといわれていますから、汁ごと食べることがポイントです。

なお、薄切りを塩もみして水にさらすとクセが和らぎ、サラダに加えて、みじん切りにして食べても良く、さっぱりと食べるならカツオ節としょう油で食べると良いでしょう。

茶色の皮の部分に多く含まれるポリフェノールのケルセチンには、抗酸化、脂質代謝改善、抗がん作用が認められ、動脈硬化や糖尿病、骨粗しょう症などの予防が期待されています。

近年、外皮エキスが健康食品として商品化されていますが、料理の際に出る外皮5~10gを煎じてお茶のようにして1日3回、食前または食間(食事と次の食事の間の空腹時間)に飲むと、高血圧や動脈硬化の予防に役立ちます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■旬の食材で薬食ライフ 過去の記事
おすすめの食材はこちら

第1回「南瓜(カボチャ)編」
第2回「栗(クリ)」編
第3回「山芋(ヤマノイモ)」編
第4回「大根(ダイコン)」編
第5回「葱(ネギ)」編
第6回「白菜(ハクサイ)」編
第7回「苺(イチゴ)」編