日本の伝統食材「大豆」

HEALTH

2024.03.02

薬学博士 池上文雄先生に教わる、旬の食材の知られざるパワー。
身近な食べものの歴史や栄養、効果・効能を知って日々のインナーケアに役立てましょう!

第28回は「大豆」です。

 

 

 

【大豆の歴史】

 

大豆は中国原産のマメ科の一年草で、我が国には弥生時代初期に渡来したといわれます。
米や麦と並ぶ重要な食材で、長い間掛かって改良されて現在みられるような品種が作出されました。

 

平安時代の『和名抄(わみょうしょう)』ではマメといえば大豆を指しました。食用に多く利用されるのは、種子の色が黄色ですが、緑色や黒色もあり、種子の形も円形から楕円形まで様々です。中国の古い鬼追いの行事と合わさり、節分に病や災いを祓う「豆まき」をして年齢の数だけ大豆を食べる慣習もあります。

 

 

【大豆の栄養成分とその効果】

 

大豆の旬は夏~秋。種子を採取して食用または薬用にします。

種子はタンパク質、脂質、糖質が特に多く、リン、カルシウムなどのミネラル、ビタミンB群、大豆サポニン、イソフラボンのゲニステイン、リン脂質のレシチン、食物繊維などが含まれています。
他の豆類に比べてタンパク質と脂質の割合が高く、その栄養価が認められていて「畑の肉」として古くから重要なタンパク源です。穀類に不足している必須アミノ酸のリジンを含み、米と大豆製品を組み合わせるとすべての必須アミノ酸を摂取できることになります。

 

 

 

糖質の大豆オリゴ糖はビフィズス菌の餌となって腸内環境を改善し、便通を正常化する効能があるので、便秘気味の人は常食すると良いでしょう。

レシチンは動脈硬化や認知症の予防効果が期待されています。

微量含まれるホスファチジルセリンは脳内の代謝を活性化し、学習能力や記憶力の改善効果があります。

油脂成分の植物性ステロールには血中コレステロール低下作用があります。

ポリフェノールのイソフラボンには女性ホルモン(エストロゲン)様の作用があるので、更年期症状の緩和、骨粗しょう症の予防や改善、乳がんや前立腺がんの予防、血流改善などの効果があります。

さらに大豆サポニンには強い抗酸化作用があり、脂質代謝改善や老化防止、肥満改善などの効果が期待されています。

 

 

【民間療法として】

 

漢方では完熟した黒大豆を蒸して発酵加工したものを胃のむかつき、不眠などに用います。

民間療法では、完熟した黒大豆をそのまま用いますが、咳や熱には1日量20gを半量まで煎じ、数回に分けて服用します。利尿、解毒には炒った黒大豆にほうじ茶を加えてお茶として飲みます。動脈硬化の予防や便秘解消には酢大豆が良く用いられます。

近年は健康食品の素材としても利用されています。大豆タンパク質はプロテインに、大豆ペプチドはスポーツ飲料にも利用されています。大豆発酵食品である納豆や豆乳なども注目されています。
食卓に上がる日本の伝統食品が健康に良いことを物語っています。

 

 

 

大豆は、そのままでも煮豆などとして料理に用いますが、豆腐なら半丁、納豆なら1パック、または1杯のみそ汁を目安に、油揚げ、豆乳、きな粉、湯葉など、毎日一回大豆製品を摂るようにすると、生活習慣病の予防や改善に大きな効果があります。いずれも昔から日本人の食卓には欠かせない伝統食品です。
黄緑色の未熟果はエダマメ(枝豆)と呼ばれ、茹でて食べる夏の風物詩ともなっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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