冬の体調管理に「温州ミカン」

HEALTH

2023.12.09

薬学博士 池上文雄先生に教わる、旬の食材の知られざるパワー。
身近な食べものの歴史や栄養、効果・効能を知って日々のインナーケアに役立てましょう!

第27回は「温州みかん」です。

 

我が国の代表的な冬季の果物で、ミカン(蜜柑)といえばこれを指します。原産地は中国南部から東南アジアの温帯地方とされるミカン科の常緑低木です。

歴史を遡れば、鹿児島県長島で天台宗の僧侶(遣唐使)のもたらしたものの実生の中から偶然に見出されたといわれ、江戸末期頃から当時の代表種であったキシュウミカン(紀州蜜柑)に代わって食べられるようになりました。

近年では種なしのために尊ばれ、我が国の柑橘類の80%を占めます。中国の温州とは関係がなく、我が国で生まれた新品種に当時の中国のミカン生産中心地であった浙江省の地名を冠したようです。

生食は10月~1月が旬です。果皮は9~10月頃に熟した果実を採取し、表面を水洗いした後にむいて天日乾燥します。

果皮には、色素のβ‐クリプトキサンチンのほか、精油のリモネン、ミルセンなど、フラバノン配糖体のヘスペリジン、ナリンギンなどを含みます。果肉には、炭水化物、クエン酸、ビタミンC、β‐クリプトキサンチン、葉酸、カリウムなどを含みます。

成熟した果実の果皮を日干しにしたものを陳皮(ちんぴ)といい、『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』に収載されています。健胃、鎮咳、去痰などの作用があり、風邪の妙薬ともされ、漢方では健胃・鎮咳薬として用いられます。

陳皮(ちんぴ)

 

民間療法では、消化不良や吐き気などに、乾燥果皮6~10gを1日量とし、500mLの水で半量まで煎じ、3回に分けて温めて飲みます。風邪や軽い気管支炎、のどの痛み、健胃などには陳皮5~10gを煎じた液におろしショウガ3gとハチミツを適量加えて温かいうちに就寝前に飲めば発汗を促していっそう効果的です。陳皮5gを刻んで湯のみに入れて熱湯を注ぎ、約10分おいてから、ハチミツか砂糖を加えて熱いうちに飲むのも良いでしょう。

 

リモネンには鎮静作用や末梢血管収縮作用などがあり、ミカンの皮(約20個分)を袋に入れ風呂につけて入浴すると、毛細血管を広げて血行をよくし、冷え症や肩こり、神経痛を改善します。

 

生薬として用いるのは外果皮ですが、果実にも健康効果が期待できます。食用とする果囊(かのう)に含まれる酸味のクエン酸は、腸を刺激して動きを活発にするため便通改善に効果があります。また、内果皮に含まれるβ‐クリプトキサンチンはβ‐カロテンの5倍のがん予防効果があり、白い筋には高血圧や動脈硬化を予防するポリフェノールのヘスペリジンが豊富です。

 

袋ごと食べると食物繊維のペクチンを豊富に含むため便秘の解消により有効です。さらにペクチンにはコレステロールを分解する働き、カリウムには血液を弱アルカリ性に保つ働きがありますので、動脈硬化や高血圧の予防にも有効です。肌の健康を保つビタミンC・Aも豊富ですので、冬の健康食といえる果物です。

 

陳皮は独特の風味があるのでスパイスとしても用いられ、七味唐辛子の材料にも利用され、また、正月に飲む屠蘇散(とそさん)にも配合されています。さらに、果皮を乾燥して、ミカン風呂、ミカン洗剤にと利用法は種々あります。

 

いかがでしたでしょうか。冬の味覚「みかん」をぜひ食べるように心がけてみてくださいね。

 

 

 

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