暮らしのなかに植物を ~観葉植物編 秋から冬季に気を付けること~
LIFESTYLE
2022.10.06
☘暮らしのなかに植物を~観葉植物編~☘
観葉植物と心地よく過ごすために、秋~冬季に気をつけること
■気温の下がる10月~3月頃は、観葉植物の「休眠期」
多くの観葉植物にとって、外気温の下がる10月~3月頃は休眠の時期になります。
もし、育てている観葉植物を前にして、そろそろ植え替えをしたほうがいいかしらなどと思っているのであれば、少し時期を待つのがいいでしょう。
熱帯原産の観葉植物は寒さに弱いものが多いため、秋から冬の低温期は特に気を付けたい時期です。
植え替えの作業は少なからず植物にダメージを与えますし、新しい土に根を張り、また土の環境に慣れるにはかなりのエネルギーを要します。
負担の大きい植え替えはできれば避け、無理をせずに適切な時期(5月~9月頃)を待ちましょう。
多くの観葉植物にとって植替えに適しているのは、5月~9月頃です。気温20℃ぐらいを目安に植え替えを始めるとよいでしょう
■観葉植物の休眠期に注意すること
ポイント1.室温
多くの観葉植物は熱帯地方が原産地です。そのため生育に最適な温度(最適温度)は20~25℃、品種によって差はありますが、この最適温度の5℃前後までは問題なく栽培ができるようです。
観葉植物の多くは熱帯地方を原産地とする
では、気温が下がるこれからの時期に気をつけることとは・・・。
☘同じ室内でも、場所によって室温に差があります。夜間は場所を移動することも考えて
熱帯原産の観葉植物にとって、冬の低温は特に気を付けたいポイント。
観葉植物を置く室内の最低温度が、何度くらいになるのかを調べておくとよいでしょう。また、同じ室内でも場所によって温度差があります。比較的室温の高い場所はどのあたりか、また低温になる場所はどのあたりかを把握し、可能ならば、冷え込む夜間には少しでも暖かい場所に移動させるとよいでしょう。
特に窓際は外気の影響を受けやすい場所。日中は日差しが入り暖かくても、夜間は一気に冷え込みます。
鉢を移動させることが難しいなら、保温性のあるものを植物と窓の間に置いてみるなどの工夫で、冷気を遮りましょう。
エキゾチックな雰囲気のモンステラ(ホウライショウ)は、熱帯のジャングルが原産地。ハワイでは古来から魔除けとして使われてきた
ポイント2.水やり
☘気温が下がる秋から冬季の水やりは、控えめを心掛けて
最低気温が10℃(種類により15℃)以下になったなら、冬越しの準備を始める時期。水やりは控えるようにします。
水やりを控えるといっても、1回に与える水の量を少なくということではありません。鉢底から水が流れ出るくらいのたっぷりの量を与えます。
水やりと水やりの間隔を、生育期よりも長くして、回数を少なくすることが大事です。
☘水やりの基本は「乾いたらたっぷり」
基本的に水やりは、用土が乾いたら、たっぷりと与えましょう。
用土の表面だけに水をかけるだけではなく、鉢底から流れ出るくらいに十分与えるのが大切です。
注意したいのは、用土が乾ききっていないのに水を与え続けると過湿状態になり、根腐れを起こしてしまうので、注意が必要。
水やりをすることで、老廃物を洗い流し、土の中の古い空気が押し出され、新しい空気が入ることになります。
品種により好む環境が異なります。それぞれの植物の特徴を知って、水やりや、光の量などを調節しましょう
ポイント3.肥料
☘冬の時期には肥料を与えない。肥料は植物が成長している生育期に施す
大事な肥料のこと
低温の時期に肥料は必要ありませんが、肥料の役割について少しお話します。
植物体を構成する必須元素は次の16種類
炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、イオウ(S)、鉄(Fe)、ホウ素(B)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)、塩素(Cl)
植物が正常に生育するには、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)以外の元素が不足しがちです。炭素(C)、水素(H)、酸素(O)の3つの元素は、空気中の二酸化炭素CO₂や土壌中の水H₂Oから吸収されますが、それ以外の元素については肥料として与える必要があるのです。
中でも窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)は、特に多く必要とする栄養素で「肥料の3要素」と呼んでおり、N、P、Kで示されます。
肥料の袋には、成分比として、この3要素の含有量が百分率(%)で示されていますので、肥料購入の際には気を付けて見てみましょう。
例えば、N:P:K=6:40:6と表示されていれば、窒素6%、リン酸40%、カリウム6%の割合となります。
では、これらの成分は植物にどのような働きかけをするのでしょう。
窒素(N)の役割・・・
茎葉や根を伸長させ、葉色を良くするため「葉肥(はごえ)」と呼ばれます。
葉や茎の生育に必要不可欠な成分で植物を大きく生長させる役割があります。植物の細胞をつくるタンパク質や光合成に欠かせない葉緑素の元になる元素です。
不足すると葉に含まれているタンパク質や葉緑素が旺盛に成長している株先に送られるため、葉の色が薄く生育不良となります。
その影響は「葉が小さい」「分枝しない」といった症状に出ることがあります。
反対に窒素が過剰になると栄養が行き過ぎてしまい、葉や茎ばかりが成長して花や実が付きにくくなり、肥満化の影響で植物が軟弱になるため、病害虫の被害を受けやすくなってしまいます。
リン酸(P)の役割・・・
開花・結実を促進するため、「実肥(みごえ)」と呼ばれます。
花や実の生育を活性化させる機能を持っています。エネルギー代謝に影響を及ぼす重要な元素であるため不足すると花の数が減り、開花や結実が遅れるなどの生長不良が発生することがあります。
過剰に与えても影響は出にくいと考えられていますが、極端な場合には草丈が伸びないといった生育不良や土壌病害を招くおそれがあります。
カリ(K)の役割・・・
根の発育を促進することから「根肥(ねごえ)」「茎肥(くきごえ)」とも呼ばれます。
カリウムは植物体内の様々な化学反応を促進します。葉で作られた炭水化物を根に送り、根の張りを良くして発育を促す効果があるといわれています。植物を丈夫にして、害虫や病気と気候の変化への抵抗力を高める作用もあります。
カリウムが不足すると、下葉の先端や縁から葉が黄色くなって葉が枯れ始め、果実の品質も低下します。リン酸と同様に過剰摂取による影響はほとんどないと考えられていますが、カルシウムやマグネシウムが欠乏しやすくなる場合があります。
これらの特徴を見ると、観葉植物や葉もの野菜には、窒素・リン酸・カリウムのうち、窒素(N)の割合が多い肥料成分のものを与えるのがよいといえますし、花が咲く植物にはリン酸(P)の割合が多いものを、また、実がなる野菜や果実にはN(窒素):P(リン酸):K(カリウム)が1:1:1と、同等の割合のものを選ぶと、それぞれの植物に合った効果が期待できます。
ポイント4.与えすぎは禁物 適切な量を適切なタミングで
植物が正常に生育するのに必要な肥料ですが、すべての肥料を多く与えれば良いわけではありません。
与えすぎは生育に障害が起こる場合があるので、適切な量を適切なタイミングで与えることが大切です。また、植物の種類によって要求する栄養素が異なるということも覚えておきましょう。
窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)の3要素のほかにも、不足しがちな元素として、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)があります。
植物の体内で健康な細胞を作ったり、根の成長を促進させるカルシウム(Ca)と、葉緑素形成に不可欠な物質マグネシウム(Mg)の2つを加え「肥料の5要素」と呼んでいます。
肥料成分の特徴を知り、適切に施肥を行えるようになれば、植物の状態を改善する一助となり得るではないでしょうか。
■植物が好む環境を知って、上手に育てましょう
さて、私たちの暮らしに潤いと癒しを与えてくれる観葉植物ですが、長く元気に育てていきたいですよね。
そのためには、植物がどのような環境を好むのかを知ることがとても大切です。
熱帯雨林に自生するアミメグサは、21℃前後の気温と、高湿度を好む植物。レースのカーテン越しのような窓際などの半日陰で育つが。蛍光灯の下でも育てることができる
植物が健やかに育つには、様々な環境要因が植物の生活に影響を与え、植物が反応してしています。
植物は言葉を発することはありませんが、水や光を欲し、土からの栄養を求めています。そして、心地よいと感じる気温があります。
また、その品種により、好む光の強さも違えば、好む水分量も異なります。明るい光が好きな植物もあれば、半日陰を好む植物も。湿っている土を好むか、乾き気味の土が適しているのか。寒さに強いのか、それとも弱い品種なのかなど。
身近にある植物がどのような環境を求めているのかを知り、その植物に適した環境で育てることを心がけましょう。そうすれば、植物にとっても私たちにとっても、ともに心地のよい暮らしを送れるのではないでしょうか。
参考図書:「熱帯植物図鑑」日本インドアグリーン協会
参考:「植物の栽培に必要な3つの栄養素と、生長を促進させる肥料の選び方 | コラム | セイコーエコロジア (100nen-kankyo.jp)」
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