【世界遺産からみる美術の世界】アントワープ聖母大聖堂に見る巨匠ルーベンスの作品
CULTURE
2022.10.17
世界遺産からみる美術の世界
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前回「海外旅行にそろそろ行きたい!」という欲を満たすべく、trip記事にてベルギーの聖アントワープ教会の注目ポイントをご紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか?
■まだチェックしてない方はこちらへ↓
【世界遺産を巡る】ベルギー・聖アントワープ教会とネロとパトラッシュ
円安の傾向がさらに高まりつつある影響下の中で、なかなか海外に足を延ばしにくい状況ではありますが、こんなときは基礎知識を高め、ここぞ!の旅行時までに美意識を鍛えていきましょう♪
今回は、その世界遺産の聖アントワープ教会に所蔵されている祭壇画を描き上げたバロック美術巨匠ルーベンスにフォーカスして参ります♪
まずは、アーティストについてご紹介いたします。
ピーテル・パウル・ルーベンスについて
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1623年『自画像』
オーストラリア国立美術館所蔵
ピーテル・パウル・ルーベンスは、バロック期(16世紀~17世紀)のフランドルの画家で、外交官でもありました。
フランドルは、現在のベルギーとフランス北部にまたがる地方で、羊毛・毛織物の産地でもあります。
彼の描く作品は大変多く存在します。
大がかりな祭壇画から、貴族の肖像画や風景画、神話に至るまで、様々なジャンルの絵画作品を残した著名な画家です。
それだけ沢山の作品を作り出すことができた理由は、大規模な工房を経営していたことが大きな要因です。
その工房から生み出された作品は、ヨーロッパ中の貴族階級や収集家間でも高く評価されていました。
また、その才能は美術のみならず、古典的知識を持つ人文主義学者、美術品収集家でもあり、さらに七ヶ国語を話し、外交官としても活躍しました。
それにより、スペイン・イギリスの王族からナイト爵位を受けています。
ちなみにバロック時代の巨匠といえば、オランダを代表する画家レンブラントもその一人でしたよね!
ベルギーを代表する画家ルーベンスの作品を比較して、是非楽しんでみてください♪
■記事はこちら↓
光の魔術師レンブラントの作品を観る。
前回、こちらの記事では『キリスト降架』をご紹介しましたが、今回は三連作のうち、残りの2作品をご紹介いたします。
■『キリスト降架』についてはこちら↓
【世界遺産を巡る】ベルギー・聖アントワープ教会とネロとパトラッシュ
【ルーベンス三連作を観る】①『聖母被昇天』
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『聖母被昇天』
ピーテル・パウル・ルーベンス
1625年 – 1626年
油彩、板
490 cm × 325 cm
聖母大聖堂、アントウェルペン
空の上を漂っている聖母マリアが、天国へと昇っていく様子が描かれているこの作品。
画面上方の中央に描かれたマリアは、白色のサテンと金の錦のドレスを身につけ、パステルピンクの裏地の色がさらに浮遊感を印象づけています。
マリアの周りには、翼を生やしたプット(幼児)がたくさん描かれており、画面上方の左側では、大きい天使が2人飛び、バラの花でできた輪状の冠をマリアに被せようとしている瞬間が描かれています。
画面下方の左側には、イエス・キリストの弟子である使徒ヨハネが、マリアの方へ腕を伸ばしている様子や、12人の使徒が描かれている他、マリアが亡くなったときに現れたとされる3人の女性が共に描かれています。
空っぽになった墓を覗き込む者やマリアの姿を目で追う者もおり、リアクションは様々です。
赤色の服を身にまとい、石の墓を指さしている女性のモデルは、ルーベンスの妻イザベラ・ブラントであるとされています。
そもそも、「聖母被昇天」とはどういう状況なのでしょうか。
キリスト教でいう聖母マリアへの信仰が、その目的ではありません。
キリストの母マリアとして、信じる者すべての人たちへの救いと希望を表す象徴として、聖母マリアを位置づけている象徴的な出来事のひとつとして認識していいでしょう。
ミサの集会などでこの作品を観ることで、まるでその浮遊している現場に遭遇しているかのうような錯覚に陥ることで、信仰心を高める役割を担っていたのです。
【ルーベンス三連作を観る】②『キリスト昇架』
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『キリスト昇架』ピーテル・パウル・ルーベンス
1610年 – 1611年
油彩、板
聖母大聖堂、アントウェルペン
では、ひとつ一つのパネルを観ていきましょう。
【中央パネル】
イエス・キリストは、イバラの冠を頭にかぶせられ、手や足を釘で十字架に打ちつけられており、9人の死刑執行人たちが、
その十字架を立ち上げようとしている場面が描かれています。
筋肉を隆々とさせた死刑を執り行う男性たちは、十字架を持ち上げようとしており、ロープを引いている者も描かれています。
【左翼パネル】
左翼パネルの画面の手前には、多くの女性や子どもたちが悲嘆に暮れている様子が描かれています。
最も手前に描かれた女性は、大きく身体をのけ反らせており、幼い子どもが彼女にしがみついており、老婆は目を大きく見開き、キリストを見つめています。
後方には、聖母マリアと洗礼者ヨハネの2人が事の成り行きを見守る姿が描かれています。
【右翼パネル】
右翼パネルの画面の手前では、白いたてがみをもった馬にまたがったローマ軍の司令官が指示を出している姿が描かれています。
今、まさにキリストを磔刑に処するよう指示している瞬間です。
後方には、キリストとともに磔刑を受けることになっている2人の泥棒の姿も描かれています。
ティントレット『キリストの磔刑 』 1565-1567年頃
536×1224cm
油彩・画布
サン・ロッコ同信会館
このルーベンスの描く『キリスト昇架』は、イタリアを代表するルネサンス期の画家ティントレットの『キリスト磔刑(画像上)』の構成と、ミケランジェロの躍動感溢れる人体表現をルーベンス独自の作風で融合させた絵画となっており、特に高く評価されています。
この『キリスト昇架』と前述した『キリスト降架』の祭壇画は、イタリアから帰還して間もないルーベンスが、フランドルにおいても画家として第一人者であるという評価を確立するのに、とくに重要な役割を果たしました。
これによりフランドル地域においてバロック美術と呼ばれる様式が広まるきっかけにもなったのです。
世界遺産からみる美術の世界 <総括>
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いかがでしたか?
教会においての美術の役割は、観るものすべての心を奪うドラマティックな作品が多く存在します。
それぞれキリスト教美術特有の専門性が必要な場面解説ではありますが、登場人物の服飾美や全体を取り巻く人物描写、そしてドラマティックな世界観を伝える構図は今もなお文化人への影響を色濃く残しています。
脈々と伝えられる美術作品を通じて、そこから歴史を感じてみるのはいかがでしょうか♪