いつも旅のなか

CULTURE

2022.04.28

 

 

著者:角田 光代

出版社:KADOKAWA/角川文庫

定価:616円(税込)

 

 

コロナ禍での海外旅行のおあずけは、いつまで続くの?

 

……かわりに心を満たす旅の本でも。

 

 

「対岸の彼女」で直木賞を受賞した著者の海外旅行体験記はいかが?

 

編集者とカメラマンとの旅もあれば行き当たりばったりに近いような独り旅も(そちらのほうがメイン)あり、24のエッセイはノンフィクションなのに、どれもよくできた物語のように面白い。

著者が旅先で困れば困れるほど、読み手の側もハラハラドキドキするのだけど、結果的に愉快なエピソードに変えてしまうところはサスガ。
あえて物語を求めてさまよってみるところは、作家になるべくしてなった人の資質なんだと思います。
それは、市井の人々の暮らしの中に飛び込んでいける行動力と高いコミュニケーション能力のなせるワザなのでしょうね。
併せて、人を見る眼の鋭さも持ち合わせているから重大な事件や事故も回避できているのでしょう。

 

著者のような旅は慎重派の私にはできないなぁ~と思いつつ、ひとつひとつのエッセイを読み終えるたびに、心に何やら余韻めいたものが残ることはお約束します。

 

あ、かえって旅に出たくなってきちゃいました(苦笑)。