【Book review】蛇鏡
CULTURE
2025.01.30
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占いにも使われる干支の謎と秘密を探ってみよう
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『蛇鏡』
奈良県のとある神社のご神体に秘密が隠されている
その秘密に翻弄される人たちの怖~い物語
著 者: 坂東眞砂子
出版社: 文春文庫
定 価: 524円(税込)
蛇と鏡の漢字を続けて「じゃきょう」と読みます。
2025年の干支が〝蛇″にあたり、KIndleの読み放題でヒットしたのがこの作品です。
初版の単行本は1994年にマガジンハウスより刊行されていますが、現在は文春文庫の扱いとなっています。
【本書のあらすじ】
文春文庫のホームぺージでは解説者のクレジット(三橋暁)入りで――永尾玲は婚約者の広樹と姉の七回忌のために故郷の奈良に帰ってきた。
結婚を目前にして姉の綾が首を吊った蔵の中で、玲は珍しい鏡を見つける……
それが惨劇の始まりだった――とあります。
また作品の舞台となる奈良県磯城郡田原本町の町役場のホームページにも作品紹介があり、そこでは、見つけた鏡の描写をもう少し詳く「蛇の浮き彫りのある鏡」としたうえで……
その日を境に、玲の心の中で何かが変わっていく。
そして、様々な人間の思惑が絡み合う中、「みぃさんの祭り」がやってくる……。
田原本町を舞台に人の心の移ろいを描き出す傑作伝奇長篇小説……とあります。架空ではなく実在している場所なんですね!
【著者について】
坂東眞砂子(ばんどう まさこ)氏は1958年高知県生まれ。
故郷である「高知県立文学館」の作家紹介やネット検索での資料を抜粋すると――奈良女子大学家政学部住居学科卒。
イタリアで建築と舞台美術を学んだのち、ライター、童話作家を経て‵96年『桜雨(さくらあめ)』(集英社)で島清恋愛文学賞、同年『山妣(やまはは)』(新潮社)で直木賞、2002年『萬茶羅道(まんだらどう)』(集英社)では柴田錬三郎賞を受賞されています。
ちなみに本作品も直木賞(‵94年)の候補作品に選ばれています。「日本人の土俗的感性に密着した伝記小説を相次いで執筆。
『死』と『性』を主題とし、人間の“畏れ”や“業”、心の底に潜む欲を浮き彫りにした作品世界が読者を魅了(高知県立文学館紹介文)」していましたが、‵14年に55歳でお亡くなりになっています。
【レビュー&エピソード】
あらすじを逆に捉えれば、主人公の玲も帰省さえしなければ……こんなことには。
なのですが結婚前の女性がこの結婚でよいのかと悩むマリッジブルーの心理もこの物語の背景にあるということですね。
事件に巻き込まれたけれど、とりあえずハッピーな玲にひきかえ婚約者の広樹氏は全くもってお気の毒。
東京から玲の実家の奈良まで車で引っ張り出され仕事で外回りをしている間(それも2~3日)に、別の男に奪われるなんて……。〝蛇鏡″は門外不出のものだろうから、蛇の神に見込まれた女性も町の外に出ることは許されないのかな。
ところで、あらすじにも触れましたが、作品の舞台が、実在しているとわかると蛇鏡の言い伝えにもリアリティが加わり、ホラー度が強まります。広い奈良県のなかで、この町を舞台に決めた理由はなんででしょう(高知県出身の著者とは縁遠いのでは)。
町の様子や旧家の作り、様々な風習や行事も取材のうえで描写されているのでしょうか。田原本町にお住まいの方に、この作品に対する感想を尋ねてみたくなります。