【Book review】あの日の交換日記
CULTURE
2024.12.20
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書くことで穏やかになれると1000年前の日記の記述にもあります
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『あの日の交換日記』
先生との交換日記の経験がある方は多いのでは?
業務日報という会社の交換日記が物語を動かします
著 者:辻堂 ゆみ
出版社: 中公文庫
定 価: 836円(税込)
文具店や書店では、師走を迎え新年に備える売り場を拡充しています。
一年の計画と振り返りの記録となる代表は、カレンダー、手帳、日記帳でしょう。でも、そのなかの日記帳は三日坊主で終わってしまう代表のひとつとしてもあげられますよね。
では、交換日記という形式はいかがでしょうか。相手があってこそ成立するものだから勝手にやめるわけにはいきません。
交換日記が終わるときは、なんらかの事情が生じているはず(恋人たちの交換日記なら……)。
書店の文具コーナーで来年の手帳を買って文庫の本棚の前を通ったところ、一番手前に積み重なっていた本書を見つけました。
【本書のあらすじ】
交換日記を題材に7つのお話からなる連作短編集。
ミステリのジャンルなので詳細は避けますが、それぞれのお話の内容と登場人物がつながっていくさまはお見事。
文庫本のカバーの裏表紙には
――先生、聞いて。私は人殺しになります。お願いだから、じゃましないでね?(「教師と児童」)
わたしだって本当の気持ちを書くからね。ずっと前から、ムカついてた(「姉と妹」)。
嘘、殺人予告、そしてとある告白……。大切な人のために綴られた七冊の交換日記。そこに秘められた、驚きの真実と感動とは?――とあります。
そして巻かれた帯には――(解説の)市川憂人氏大絶賛!「辻堂ミステリの最高傑作であり真骨頂。本書で秘密を解くのは探偵ではない。読者である」手書きで綴られるからこそ伝わる大切な人への想い。
何度も読み返したくなる、≪日記≫に仕掛けられた感動と驚愕のトリック!――とアピールしています。
【著者について】
辻堂(つじどう)ゆめ氏は1992年神奈川県生まれ。
東京大学卒。第13回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞し『いなくなった私へ』でデビュー。
『トリカゴ』で第24回大藪春彦賞受賞。他の著作に『山ぎは少し明かりて』『十の輪をくぐる』(小学館)、『僕と彼女の左手』(中央公論新社)など多数――文庫本のカバーより。
【レビュー&エピソード】
舞台はいたって日常、登場人物の設定も職業も特別感はありません。
私の住む町にこんな人がいても、なんらおかしくありません。
物語に事件はあるものの、新聞やテレビで取り上げられるようなものではなく、名探偵や刑事が謎解きをするわけではありません。
それでもミステリが成立するということは、私の住んでいる町にもミステリが潜んでいるかも知れないということですね。ご近所や学校、職場の方々と身近な人や出来事の噂話を交わすかかのように(「へ~、は~」「そういうことだったの」という会話が飛び交う様子で)物語を読み終えました。
もしかして私の身辺にも起こりえるかもしれないという軽い恐れを伴う余韻を残しながら……。
ところで、交換日記はワタクシ書評子も小中学校で経験があります。
学校全体の方針ではなく、この物語のように担任の先生によるクラス別の指導でした。今更ながら先生もたいへんでしたね、おかげで日記は続きました。
でも現在は手帳が日記がわりです(大汗)。