【Book review】クリームイエローの海と春キャベツのある家
CULTURE
2024.11.05
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普通に過ごすってことだけでもこんなに愛おしいドラマがつくれます
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『クリームイエローの海と春キャベツのある家』
6人が暮らす団地の間取りは? 部屋の使い方は?
題名をはじめ暮らし方がなんだかとても気になります
著 者:せやま南天
出版社: 朝日新聞出版
定 価: 1,650円(税込)
家事のアイディアに関する“TikTok”が好きです。
様々な工夫に感心するのはもちろんですが、早送りの動画なので、いっそう瞬く間にきれいに上手にできていく様子が楽しい。見ているだけで自分が家事の達人になった気分でズボラな身の回りを反省することもなくベッドでだらり、うっとり眺めます(汗)。
そこで【家事小説】というジャンルがあるのなら、その中に間違いなく入ると思われる本書ですが、タイトルは「クリームイエローの海」となにやら意味深。いったいな~に?と、小さい子連れのお母さん達でにぎわう、近所の図書館で借りてみました。今年(2024)の4月30日に初版が発行されています。
【本書のあらすじ】
版元(朝日新聞出版)のH.P.によると――「家事代行歴3ケ月・津麦の新しい勤務先は、5人の子どもを育てるシングルファーザーの織野家。
一歩家の中に入ると、そこには「洗濯物の海」が広がっていた――。
仕事や家事、そして育児……何かを頑張りすぎているあなたへ贈る物語。読めば、心がふわりと明るくなる、期待のデビュー作!」とあります。
そこにある書影にはオビもかかっていて、上記のコピーが入っていますが、目をこらすと「洗濯物」の文字には「クリームイエロー」とルビがふられていて……ということは、クリームイエローの海って!? 家事小説から恐怖小説のジャンルに入っていきそうな予感(笑)!!
【著者について】
せやま南天(なんてん)氏は1986年京都府生まれ。
2023年、デビュー作である本作にて創作大賞2023(note主催)朝日新聞出版賞受賞。――と、単行本の奥付の著者紹介にあります。
版元のH.P.には、著者と担当編集者が本になるまでを綴った日記がリンクされているので、著者の顔出しはありませんが、どんな雰囲気の方なのかを、直筆のPOPやサインとともに想像を膨らませることができます。
【時代&背景】
朝の連続テレビ小説「虎に翼」が最終話を迎えました。
主人公寅子の「はて?」から始まる戦前の男女同権の願いは、現代の男女雇用機会均等法を成立させるまでに至りました。それから今日まで40年ほど経っていますね。
20代後半の主人公津麦の母は、男女雇用機会均等法には縁遠い専業主婦の道を選んでおり、津麦は幼い頃から、徹底した家事を実践する母の背中を見て育っています。一方の父は自ら立ち上げた税理士事務所にかかりきりで、津麦は父と遊んだ記憶がありません。
【レビュー&エピソード】
クリームイエローの洗濯物の海に溺れそうになる津麦ですが、冷蔵庫の中の常備菜・春キャベツを活用しながら、総勢6人の家族の胃袋を満たす料理をつくります。
若い女性が家事代行をすることで物語が生まれる展開は、人気ドラマになった『逃げるは恥だが役に立つ』を思い出させます。
もっとも『逃げ恥』の主人公は派遣切りで職を失いやむをえず。
『クリキャベ(本書のファンの略称)』の津麦は正社員として大手商社に入ったものの過労で倒れ、自主退社しています。