【Book review】ナマケモノは、なぜ怠けるのか?

CULTURE

2024.06.05

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ヒトはなぜ無理をするのでしょう?生き物の本で癒されませんか?

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『ナマケモノは、なぜ怠けるのか?

あなたはそのままでいいのです。

叱責されたとき疲れを感じたとき手にしてみてください

 

著    者: 稲垣 栄洋

出版社:ちくまプリマー新書

定    価: 858円(税込)

 

 

読書家の友人から手軽に読めて、ためになる本として勧められたのが本書です。

表紙込みで180頁。新書版なのでバッグにいれてもジャマになりません。

生き物がテーマですが、さまざまな生き物を観察しながら人間の本質や生き方を探る――そんな手法でところどころでハッとさせられます。

例えば、つまらない生き物としてカタツムリを出しておいて、「善いことはカタツムリの速度で動く」というマハトマ・ガンジーの言葉で締めるという風に。

巻頭から読み手の心を掴みます。

 

 

【本書のあらすじ】

 

「はじめに」のカタツムリに続けて取り上げる生き物は、第1章は「みっともない」を冠にしてナメクジをはじめ計6種。

第2章は、「にぶい」でまとめてダンゴムシをはじめ計7種。

第3章は「ぱっとしない」で、第4章は「こまった」で括ります。

登場するどの生き物もほぼ同じ文章量で、内容と同じく生き物によって優劣をつけることはありません。

短所のように見えるところこそ、実は長所であり個性であるとアピールします。そして5章、6章とその個性こそが重要で「そのままでいい」と総括する物話の流れは最後にヒトへとつながっていきます。

新書のカバーには――ナメクジ、ダンゴムシ、モヤシ、イモムシ、雑草……。いつも脇役の、「つまらない」生き物たち。

しかしそのつまらなさの裏に、冴え渡る生存戦略があった! ふしぎでかけがえのない、個性と進化の話――とあります。

 

 

【著者について】

 

稲垣栄宏(いながき・ひでひろ)氏は1968年、静岡県静岡市生まれ。

岡山大学大学院農学研究科修了。農学博士。専攻は雑草生態学。農林水産省、静岡県農林技術研究所等を経て、静岡大学大学院教授。

農業研究に携わる傍ら、雑草や昆虫など身近な生き物に関する著述や講演を行われています。著書に、『植物はなぜ動かないのか』『雑草はなぜそこに生えているのか』『はずれ者が進化をつくる』(ちくまプリマー新書)、『身近な雑草の愉快な生きかた』(ちくま文庫)、『たたかう植物-仁義なき生存戦略』(ちくま新書)など――新書の著者紹介より(一部省略)。

 

 

【レビュー&エピソード】

 

著者が雑草の研究をされていることから思い出されるのは「雑草魂」という言葉(1999年の流行語大賞)。

元読売ジャイアンツ、メジャーリーガーとしても活躍した、上原浩治氏が自らを雑草に例えた言葉です。踏まれても、厳しい環境にあっても強く立ち上がる不屈の精神――という意味合いで例えられていますが、本書のなかでも取り上げられている箇所を読むと、実は、厳しい環境に抗うのではなく適合して進化を遂げた植物であることがわかります。

狡猾というと言い過ぎかもしれませんが、環境にうまく合わせて生き延びてきたのですね。「雑草魂」を雑草側からとらえると真逆の使い方になりますね(笑)。

地球誕生46億年前、生き物誕生が38億年前(本書より)。様々な生き物が生まれ滅んでいきました。

環境に適合して生き延びてきた生き物だけが遺伝子を引き継いできたわけですね。現在、自分たち(私もあなたもヒトそれぞれ)が存在している確率は70兆分の一と言う数字の記述には驚きます。

つないでくれた先祖に感謝しつつ、大事に生きなければ、という気持ちが自然に生まれてきます。