【Book review】屋根裏のラジャー

CULTURE

2024.06.15

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ジュニア向けのファンタジーという勿れ

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『屋根裏のラジャー

誰しも経験する幼児期に出会う心の友だちが主人公

大人になっても持てる人がいるみたいですよ

 

著    者:ノベライズ 岩佐まもる

出版社:KADOKAWA/角川文庫

定    価: 748円(税込)

 

ついに専業としての本屋さんが1件も無くなってしまった、故郷の大型ディスカウントストアのBOOKコーナーで購入しました。

3館あった映画館もとっくの昔に無くなってしまったけれど、アニメ映画のフェアとして本書の陳列コーナーが作られていたのです。10代~20代向けのライトノベルのジャンルに位置する本書ですが、誰が読んでも読者は読者。

映画館がなくてもファンタジーの世界感を活字の中で浸ってもらえれば――との思いから、一人でも本好きが増えていって、故郷に本と映画が融合したミニシアター館ができたらいいなぁ、なんてファンタジーを抱いたのです。

 

 

 

 

【本書のあらすじ】

 

文庫の表紙のあらすじには――「少年ラジャーの姿は、誰にも見えない。

少女アマンダによって生み出された想像の友だち――‶イマジナリ″だからだ。

いつも一緒の2人だったが、思いがけず離れ離れに。彼女の想像力がなくなると、彼の存在も消えてしまう。さらに彼を食らおうとする恐ろしい影も迫っていて――。

窮地のラジャーは、個性豊かなイマジナリたちに出会い、大切な人の未来を懸けた大冒険へと旅立つ。

スタジオポノックが贈る感動超大作ノベライズ!」――とあります。

 

 

【ノベライズの著者について】

 

岩佐(いわさ) まもる氏は1999年「ダンスインザウインド」で第4回スニーカー大賞優秀賞を受賞しデビュー。

「コードギアス 反逆のルルーシュ」「コードギアス 反逆のルルーシュR2」シリーズ(ともに角川スニーカー文庫)、『七つの大罪 セブンデイズ』(講談社ラノベ文庫)、『泣きたい私は猫をかぶる』『雨を告げる漂流団地』(ともに角川文庫)などのノベライズを手がける――文庫本のカバーより。

誕生年を公表しておらず、ライトノベル作家に位置づけられています。また、映画を製作したスタジオポノックについては――スタジオジブリ作品「かぐや姫の物語」や「思い出のマーニー」をプロデュースした西村義明が立ち上げたアニメーション制作スタジオ。

初の長編映画「メアリと魔女の花」は、

世界150以上の国と地域で上映され鮮烈なデビューを飾る。イギリスの詩人・作家のA.F.ハロルドによる小説『The Imaginary』を映画化した「屋根裏のラジャー」は、スタジオポノックの長編2作品目となる――と紹介。

初めに小説があり、それを元に映画化、その映画のノベライズが本書、となります。

 

 

【レビュー&エピソード】

 

活字で、華やかな動きのアニメーションをよく伝えているなぁとの感想をまず持ちました。

映画の原作の「The Imaginary」(邦題:ぼくが消えないうちに:こだまともこ訳・2016年ポプラ社刊)は発表されるや英国文学協会賞受賞を皮切りに、数々の文学賞にノミネートされた傑作。

お話の主人公になるイマジナリー フレンド(imaginary friend)とは、小学館のデジタル大辞泉によると、イマジナリー コンパニオン(companion)とも称される、幼児などが空想する架空の遊び相手のこと。

幼児期の子供が一人の時に「実存しない誰か」にお話をしている。この「誰か」のことを指します。

子供の発達過程における自然現象で成長とともに消えていくのがほとんど、とのこと。

存在を否定せず見守ることが肝心なのだそうです。人間の形をしているとは限らず、本書のなかでも冷蔵庫の友だちが登場します。