【Book review】四月になれば彼女は

CULTURE

2024.04.18

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恋と生きる道の迷いは旅の道先で解決されるのかもしれません

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『四月になれば彼女は

愛にこだわりたくてもこだわれない

その苦しさをインド洋の朝日が救ってくれました

 

著    者: 川村 元気

出版社:文春文庫

定    価: 792円(税込)

 

 

三寒四温の気候が春の訪れを告げる頃、地下鉄の車両で、2024年3月22日公開の映画「四月になれば彼女は」の宣伝ステッカーを見つけました。

本書はその原作です(‛19年文庫化)。著者は、小説より先に映画の世界で功成り名遂げたプロデューサー(後述参照)。題名元(であろう)のサイモン&ガーファンクルの名曲を「April Come She Will♪」と小さく口ずさみながら本屋さんに向かいました。

 

 

【本書のあらすじ】

 

文庫本のカバーにある記載によりますと、「四月、精神科医の藤代(フジシロ)のもとに、かつての恋人・ハルから九年ぶりに手紙が届いた。

だが藤代は、そのとき結婚を決めていた。愛しているのかわからない女性と。

失った恋に翻弄される十二ヶ月がはじまる――。なぜ、恋も愛も、過ぎ去ってしまうのか。川村元気が挑む、恋愛なき時代における異形の恋愛小説」とあり、帯には「胸をえぐられる、切なさが溢れだす『究極の恋愛小説』」ともあります。

映画では主人公の藤代を佐藤健が、ハルを森七菜、婚約者を長澤まさみが演じています。

 

 

【著者について】

 

川村 元気(かわむら げんき)氏は1979年横浜生まれ。

上智大学文学部新聞学科卒。東宝入社後、プロデューサーに。2005年に『電車男』、08年『デトロイト・メタル・シティ』、10年『告白』『悪人』、11年『モテキ』、12年『おおかみこどもの雨と雪』、16年『君の

名は。』……と話題作&大ヒット作を連発。

映画製作の傍ら、執筆活動も始め、12年に初小説『世界から猫が消えたなら』を発表しベストセラーに。続けて14年『億男』、16年には本作、19年『百花』、21年『新曲』と著書を重ね、自らの小説を原作として映画化も。

小説だけでなく絵本、対談、翻訳、エッセイなども執筆。そのほかミュージックビデオや広告・イベントもこなし、マルチに大活躍。個人、作品ともに受賞歴多々ありと、いま最も動向が注目されるクリエーターと言えます。

 

 

【舞台&背景】

 

大学のサークルで知り合った恋人たちの当時と現在(いま)の暮らしが交錯します。

東京を日常の舞台にしながら、始まりはボリビアのウユニ湖で、物語のクライマックスにはインドのカニャークマリが舞台となります。

小説の中の登場人物がウクレレで歌う、サイモン&ガーファンクルの楽曲「四月になれば彼女は」は2分足らずの短い曲。4月に出会い、8月に別れた恋を9月に思い出すという内容です。

1966年の2ndアルバム『Soundof Silence』に収録されていて、ダスティン・ホフマン主演の映画『卒業』(1967年)にも効果的に使われています。映画のラストシーンが小説の中にも登場して、ハッピーエンドではない、別の見方を示唆してくれます。

 

 

【レビュー&エピソード】

 

特別何をするわけではないように思えるのですが、藤代はよくモテます。映画『卒業』の不適切な不倫関係よろしく、婚約者の妹から、ちょっかいを受けたり、同性からも告(コク)られたり。

一方、藤代は「愛することに、こだわれなくなった」と吐露し、婚約者を失いかけます―それはモテるからじゃないのかなぁ、―なんて映画化の主人公役佐藤健を藤代に当てながら読んでそう感じました(テヘ、汗)。