日本初公開!メトロポリタン美術館所蔵《女占い師》からラ・トゥールの魅力に迫る

CULTURE

2022.04.03

 

 

世界各地の文化遺産を包括的に所蔵しているアメリカ・ニューヨークのメトロポリタン美術館は、ヨーロッパ絵画部門に属する作品を約2500点も所蔵しています。

 

現在、その作品が昨年大阪での会期を終え、東京・新国立美術館で展覧されています。

 

◆展覧会情報はこちら☞ 新国立美術館「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」

 

今回の目玉は、なんと名画65点(うち46点は日本初公開)!

作品は、15世紀の初期ルネサンスの絵画から19世紀のポスト印象派まで、西洋絵画の500年の歴史を彩った巨匠たちの傑作が一挙に公開しています。

 

その中から、今回は「目線のやりとり」が特徴的な作品を生み出したラ・トゥールの魅力に迫ります。

 

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moca読者の皆さんは、
この男女のやりとり、そして手元の動きを見て、何を感じますか?

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—— ジョルジュ・ド・ラ・トゥールと絵画ジャンルについて

 

ラ・トゥールこと、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールは、フランス古典主義を代表する画家です。

 

フランス古典主義とは、古代ギリシア・ローマの古典にならって成立させた17世紀のフランスで展開された絵画ジャンルを指します。

 

その時代の学芸・文化を「見習うべき基本」として、その「古典」が最も重要とされ、それを鑑賞者側に訴えかける意図も込めて描かれていた絵画の風潮です。

 

 

 

古典回帰が斬新で新しいのか?と言われると、決してそうではありません。

 

14世紀イタリアで起こった文化運動「ルネサンス」もまさにその古典回帰であり、芸術の思想が大きく変わった時代でした。

 

このようにして、いつの時代も今ある価値観を否定し、昔に戻ろうとする動きが起こっていたわけです。

 

そのような背景でラ・トゥールは、17世紀のロレーヌ公国(現フランス北東部)で活躍し、ルイ13世の国王付き画家に任命されたほどの技量の持ち主として活躍をします。

 

彼の魅力は、作品だけではありません。
没後急速に忘れ去られ、20世紀に再評価された画家という点も非常に関心を持たれる側面のひとつです。

 

残された作品は非常に少なく、生涯についてもあまり詳しいことは知られていません。現存するラ・トゥールの真作は20数点、多ければ60数点とする説もあります。

 

彼が住んでいたロレーヌ地方は、当時の戦乱や災害の影響もあり、作品が多く失われたこと、さらには彼の息子も画家でしたが、貴族に出世したのち、画家であることをひた隠すようになったという点も、彼の評価が遅くなってしまった要因とされています。

 

このように紆余曲折あり、20世紀になってラ・トゥールの作品が再注目されるまでにやっと行き着くのです。

 

では、作品を観ていきましょう♪

 

 

—— ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《女占い師》おそらく1630年代

 

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール

《女占い師》 おそらく1630年代

油彩/カンヴァス 101.9×123.5cm Rogers Fund, 1960 / 60.30

 

 

今回、初来日で公開されている作品は、この女占い師という作品です。

占い師の老婆を見つめる若者が、周りの女性たちから財布や宝飾品を盗み取られる場面が描かれています。

 

硬直したようなポーズ、にらみつけるような眼差し、派手な色の風変りな衣服が、強烈な印象です。

 

占いの情景は、17世紀初頭ヨーロッパ中で流行していた作品で、ラ・トゥールもその流れに乗って描いたとされます。

 

単純化・平面化された構図や画面にただよう静寂な雰囲気の中に、人間の騙しあいや欲望が渦巻くため、違和感のみが際立ちます。

 

 

男性は少しのけ反っており、なんだか偉そうです。
男性のすぐ横にいる画面右側の女性は、目をギョロっとさせ、相手の様子を伺っています。
画面一番右の占い師の老婆は、自分の話に夢中にさせるため会話に必死です。

画面左側の女性たちは、存在感こそないものの手元の行動で目的は一目瞭然ではないでしょうか?

 

 

目線こそそれぞれをじっと見つめ合っているにも関わらず、己の欲求を満たすために騙し騙されている。表面的なところはすべて嘘(女性)や見栄(男性)で覆われていて、本心とは裏腹なんてことは、今でこそよくある話なわけです。

 

一方で、見ている側は、その盗みの現場を見て見ぬふりをしている、そんな気分にもさせられますね。
道徳的な意味も含め、人間の愚かさすらも感じる作品ではないでしょうか。

 

 

—— もっとメトロポリタン美術館の作品を楽しみたい方はこちら!

 

現在、その作品が昨年大阪での会期を終え、東京・新国立美術館で展覧されています。

 

◆展覧会情報はこちら☞ 新国立美術館「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」

 

その他の収蔵作品は、アメリカ本国のサイトでいつでも検索できます。
是非、お気に入りの作品を見つけてみてくださいね♡

 

◆The Metropolitan Museum of Art