【Book review】大草原の小さな農家

CULTURE

2026.07.29

🌹

緑が生き生きとする季節に、植物との暮らしが感じられる本を選んでみました。

🌹

 

『大草原の小さな農家

オーストリアを中心に二拠点暮らしを続ける俳優の著者

島国と異なる陸続きの大地で日々の考えは深まります

 

著    者:中谷美紀

出版社: 幻冬舎文庫

定    価:825円(税込)

 

中央線立川駅の改札内、中央線と青梅線を結ぶ2階のコンコースにある「ぺーパーウォールエキュート立川エキナカ店」は、朝早くから開いている嬉しい本屋さん(net検索すると朝7時開店とあります。Wow ‼)。

それも、キオスクやコンビニのようなコーナー扱いと異なり、文庫あり、書籍あり、雑誌ありで、ジャンルもさまざま。多くの冊数のなかから自分のいちばん関心のあるものを選べる、いわゆるきちんとした書店然であるのがさらに嬉しい。

通勤、通学時に(駅そばのごとく)ふらりと立ち寄って、頭と心の空腹を満たすのですね(立川駅を利用する方の文化度高‼)。

私が訪れたのが7時40過ぎでしたが、レジ待ちの先客が数名いらっしゃいました。

文庫の初版発行日を見ると当日は本書の配本初日で(おそらく)、店の入口近くの最前列に平積みされてアピールしていました。梅雨時の鬱陶しい空模様でしたが、表紙のさわやかな高原の写真が目に飛び込んで誘われた次第。

手にとって著者が有名な俳優の中谷美紀氏であることに気が付きました。恥ずかしながら、著者のエッセイは初めてです(すでに何冊も出されているのですね……ますますもって恥ずかしい)。

作家である前の俳優としての仕事は映画『嫌われ松子の一生』が強く印象に残っています(日本アカデミー主演女優賞)。

では、「書くことでしか自らを生きることのできない人間」と称する著者の「魂の救済」と呼ぶ文章を味わってみようと思います。

 

 

 

【本書のあらすじ】

 

本書の題名を含むエッセイが34本。

カバーの紹介文には――「オーストリアでの暮らしを始めて、早や十年。静寂と自由を求めて、さらなる田舎への引越しを決意。ようやく見つけたのは、築130年の農家を改造した小さな家。

枯れた老木を撤去したり、果樹を植えたり、リノベーションをしたり。不便さを楽しみながら、豊かな自然と共に暮らす。自分の居場所を整える傍らで、日々の思いを綴ったささやかなエッセイ――とあります。

 

 

 

 

【著者について】

 

中谷美紀(なかたに みき)氏は1976年東京都生まれ。女優。

数々の映画、ドラマ、CMなどに出演。初舞台『猟銃』では、第46回紀伊國屋演劇賞個人賞などを受賞。2作目の舞台『ロスト・イン・ヨンカーズ』では、第21回読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞。絵本、エッセイ集、旅行記の刊行など、その活動は多岐にわたる――と文庫の著者紹介に。

著書には、ベストセラーとなった『インド旅行記1~4』『オーストリア滞在記』『文はやりたし』『オフ・ブロードウェイ奮闘記』(すべて幻冬舎文庫)とあります。

 

 

 

 

【レビュー&エピソード】

 

本書の紹介で「ささやかなエッセイ」とありますが、扱うテーマは、ユダヤ人やウクライナからの難民もあったりして、人種間の対立に関する内容も多く、すこぶる真面目です。

文体も、うわついてはいません。それがヨーロッパで暮らすアジア人としての、日々の思いでもあるということなのでしょう。ドイツ人のご主人と継娘とのエピソードもあります。

口絵の写真からは「小さな農家」のフレーズは浮かびづらいのですが「風にそよぐ緑や、空を眺めながら、空想の世界で戯れ、何もしないひとりの時間を愛する(本書より)」著者の心にいくらかふれられた気がします。