【Book review】小説 言の葉の庭
CULTURE
2026.06.21
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古代から花と緑は暮らしと文化に必要不可欠のものでした。そして雨と恋も。
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『小説 言の葉の庭』
1300年前の人の気持ちは現代人と変わらずとも
私たちの感性は鈍りすぎて恋ができなくなっているのかも
著 者:新海誠
出版社: 角川文庫
定 価:902円(税込)
昭和の日はかつて天皇誕生日でした。
現在の年号は令和ですが、制定の際、初めて国書の万葉集が出典先(それまでは中国の四書五経が中心)となり話題となりました。
そんなGWの祝日は、今年は時折小雨がぱらつくものの散歩には差し支えなくコースに入れた書店で休憩がてらの雨宿り。初版の単行本は読んではいるものの、文庫本の巻末の解説が気になり(文庫の楽しみ)平成の名著を手に入れて小説では雨宿りの舞台となった東屋(カバー表紙参照)ならぬ書店を後にしました。

【本書のあらすじ】
購入した文庫本(令和7年8月25日48版)の紹介では――また会うかもね。もしかしたら。雨が降ったら……。
雨の朝、静かな庭で2人は出会った。靴職人を志す高校生の孝雄と、謎めいた年上の女性・雪野。迷いながらも前に進もうとする2人は、どこへ足を踏み出すのか。
圧倒的な支持を受けた劇場アニメーション『言の葉の庭』を、新海誠監督みずから小説化。
アニメでは描かれなかった人物やエピソードを多数織り込み、小説版ならではの新たなる作品世界を作り上げた傑作――とあります。
元となる単行本(2014年4月11日初版発行)から、もう干支がひと回りする年月が経っているのだなぁと驚きつつ、1300年前の恋心を伝えた万葉集のように、この作品世界をもっと多くの人にもっと長く共感してもらえたら嬉しいなぁと心底思います。

【著者について】
新海 誠(しんかい まこと)氏は1973年、長野県生まれ。アニメーション監督。
2002年、ほぼ一人で制作した短編アニメーション『ほしのこえ』で注目を集め、以降『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』『星を追う子ども』『言の葉の庭』を発表し、国内外で数々の受賞。16年公開『君の名は。』は記録的な大ヒットとなり、19年公開の『天気の子』、22年公開の『すずめの戸締り』も大きな話題に。
自身の監督作を自ら小説化した本作のほか、『小説 秒速5センチメートル』『小説 君の名は。』『小説 天気の子』『小説すずめの戸締り』なども高く評価(文庫本より)。

【レビュー&エピソード】
原作映画の脚本をなぞったままのノベライズ作品も正直ありますが、この本はその範疇ではなく全く別物。
映画タイトルの前に「小説」を謳うだけのことはあります。解説の神田法子氏が著者の小説術を分析(本書を小説づくりのお手本にできるものならしたい・汗)。
そのテクニックもさることながら、心が動かされるフレーズが散りばめられている(書物は言葉が視覚に強く入ってくる)のが、やはり魅力。
例えば、「どうせ人間なんて、みんなちょっとずつおかしい」とか「必要なのは確実な未来ではなく、新しい未知だった」、「自分の本当に生きるべき場所はいつでも少しだけ先にあり、だからあらゆる責任からは自由だった」、「誰かがわたしをここから連れだしてくれないかな」には付せんが立ちました。
極め付きは「万葉時代の『孤悲(恋)』という表記に納得してしまう人は、きっと現代にもたくさんいるのだろう」という著者の確信に近い思い。
それぞれのエピソードにつけられた万葉歌もいいですね。解説にもあるように二股愛を含む恋の歌も万葉集にはあって……読後のファーストインプレッションは「私もいい恋したいなぁ」でした(笑)。
