【Book review】消滅世界
CULTURE
2026.03.13
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「見てから読むか、読んでから見るか」映像と文字の融合で楽しみは拡がります
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『消滅世界』
性についての小説ならではの自由奔放なエンタメ世界
未来都市と男性の人工子宮の映像化は? どうなる?
著 者:村田沙耶香
出版社:河出文庫
定 価:693円(税込)
2025年11月28日公開の本書と同タイトルの映画の(もちろん)原作です。
著者が生み出した名作のなかから初の映画化となります。
映画の公開に合わせWカバーを施して、モノクロを基調にした夫婦となる2人の俳優の写真とともに「性が消えた楽園」「あなたの正常が試される」のコピーが静かに配置され、見る人の心を冷たく突き刺します。
映画の内容も原作にそったものではあるので、本書のあらすじにあるように「夫婦の営み」が「近親相姦」として非難される近未来世界のお話です。
さらに恋愛、結婚、家族を否定する斜線がカバーにはデザインされていて、これは映画というエンターテイメントの代表的なテーマを全否定することにほかなりません。
単純な娯楽ではないというところを踏まえて映画を見にきてください、ということかしら。その前に予習として読んでおきましょう。本書のあの部分、この部分がどう映像化されたのかを知る楽しみが増えますからね(笑)。

【本書のあらすじ】
カバーの裏表紙には、このような紹介が
――セックスではなく人工授精で、子どもを産むことが定着した世界。そこでは、夫婦間の性行為は「近親相姦」とタブー視され、「両親が愛し合った末」に生まれた雨音(あまね)は、母親に嫌悪を抱いていた。清潔な結婚生活を送り、夫以外のヒトやキャラクターと恋愛を重ねる雨音。だがその〝正常″な日々は、夫と移住した実験都市・楽園で一変する……
日本の未来を予言する傑作長篇。◎解説=斎藤環
――夫婦では性行為は行わないけれども
それぞれ愛人を持つことはかまわないという倫理感。あえて誰の子かわからない子をつくり共同で育てるという家族関係が描かれます。

【著者について】
村田紗耶香(むらた さやか)氏は1979年千葉県生まれ。
2003年「授乳」で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞しデビュー。
09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島賞、16年『コンビニ人間』で芥川賞、25年『世界99』で野間文芸賞を受賞。他の著書に『殺人出産』『地球星人』『生命式』など
――と文庫カバーに写真つきで紹介されています。
錚々たる授賞暦で実力は折り紙つきの現代作家といえましょう。

【レビュー&エピソード】
図書館で単行本を、まず読みました。
文庫本は貸し出し中でしたが、たいへんな人気で予約者が15人控えていたほど。新宿の紀伊国屋書店を覗いたところ2025年9月20日発行で20刷、ダブルカバーには14万部の印字が輝いていました。
その後、地元のブックスオオトリで手にした文庫は、‘25年12月30日で24刷、オビの数字は15万部に。映画化を挟んで1万部増えたことになります。
これは作品の魅力もさることながら、映画化に合わせたキャンペーンが一役買っているといってもいいのではないでしょうか。
さてまた、図書館の話に戻りますが単行本(初版は2015年12月)より文庫本に人気が高いのは解説が読みたいのかなぁとも思った次第(内容に違いはないので……)。
こんな単純ではないお話なら尚更……少なくとも私は創作の背景と生み出した著者をもっとよく知りたくて解説目的で購入したのです(汗)
