こころの旅
CULTURE
2022.05.31
著者:神谷 美恵子
出版社:日本評論社
定価:1,650円(税込)
もっと早くに知っておけば、人生は変わっていたのでは、という思いや経験は誰にでもあるのではないのでしょうか。
本書もそういう類いのもののひとつ。
Kindleの読み放題のリストに入っていたので読みはじめたところこれが面白くて……、もっと早くに読んでおけばなぁ、と後悔した次第。でも、コペルニクス的転回は何度か訪れるようなので残りの人生で活かすしかありませんね。
さて、本書は精神科医である著者が、胎児として人生を出発するところから、死に至るまでの人の心のあり方や動きを「旅」としてとらえ、たどったもの。自らの考察のみならす、先人の解説や気鋭の研究者の論文なども加わります。
1974年が初版と、かなり前の発行ですが(著者は79年没)魅力はあせず、2006年9月に79刷と底本の奥付にはあることは名著の証であることに他なりません。本の魅力もさることながら、著者自身の魅力も十分で、父の転勤に合わせて海外で暮らすうち、フランス語で考えたり、読み書きするほうがラクだとか、上皇后美智子様のかつての相談相手役であった逸話もあり、本書が紀子様の愛読書という話も伝わってきています。