店長がバカすぎて
CULTURE
2021.11.25
著者
早見和真
角川春樹事務所
定価:本体690円+税
書名だけ聞くと、どんな店なのかと思いますが、中規模(おそらく?)な書店チェーンの東京郊外の本屋さん(アルバイトを含めて従業員7~8名・きっと?)が舞台。そこで働く契約社員の女性が主人公です。とにかくこの主人公の心情描写がキレ過ぎていて、痛快! アルアル感を持たせながら、冒頭の店長をはじめ、各章に登場するバカどもに罵詈雑言を浴びせかけます(心の声で、ですよ)。
それでも辞めずに(辞表を書いても出さずに)いるのは、ひとえに本が好きだから。愛する本のため、理不尽な上司の命令や厳しい職場環境、クレイマーの常連客にも耐えられるのです(どんな職場でも怒りの心の声はありますよね)。でも悲壮感が漂わないのは、コメディタッチの味付けのおかげ。登場人物たちが繰りげる会話にニヤニヤと微笑みながらスラスラと読めます。
書店の裏事情や出版社とのやりとりがわかってためになる、お仕事小説ながら、推理小説の要素も入っていて謎解きも楽しめます。あちこちにちりばめられた伏線を回収しながら、最後は主人公自ら「私がバカすぎて」と言いつつハッピーエンドに。(あぁ面白かった、の感想と共に)「書店員さんガンバレ!」の声援を送りたいと思います。