【Book review】愛の夢とか
CULTURE
2026.08.18
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また会いたい人がいる。本の世界なら何度でも何十年ぶりでも支障はありません。
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『愛の夢とか』
覚えていますか? あの植物園の約束。
登場人物はみんなとってもチャーミング‼
著 者:川上美恵子
出版社: 講談社文庫
定 価:660円(税込)
著者の川上未映子氏は何度か登場しています。それだけ魅力的であるということですが、負けず劣らずチャーミングな読書家の友人が「推し」ているのがこの短編作品集。
私はすでに一度、読んではいるものの、あの人が勧めるのなら……と再読。そうしたら、今度は表題作と異なる別の収録作品がとても気になってきました。
年月を重ね、自分が成長したのかも……なぁんて(笑)。近くにいたのに気がつかなかった青い鳥をようやく見つけた気分……と言えるのかも。
「あら、ようやく気が付いたの?」と文庫のなかから一篇の作品が私に呼びかけてくるかのようです。

【本書のあらすじ】
七つの短編の作品集です。手元にある文庫は2016年4月の初版発行です(10年の時が過ぎているのかぁ)。表題に用いられている『愛の夢』とは、音楽家リストが作曲したピアノの名曲のこと。
H.P.ではこんな風に紹介されています――あのとき、ふたりが世界のすべてになった……。ピアノの音に誘われて始まった女どうしの交流を描く表題作「愛の
夢とか」。
別れた恋人との約束の植物園に向かう「日曜日はどこへ」他、なにげない日常の中でささやかな光を放つ瞬間を美しい言葉で綴る。
谷崎潤一郎賞受賞作――記載のない残りの作品タイトルは「アイスクリーム熱」、「いちご畑が永遠につづいてゆくのだから」、「三月の毛糸」、「お花畑自身」、「十三月怪談」となります。3年前には「アイスクリーム熱」が吉岡里帆主演で映画化されています。

【著者について】
初めて著者を知る読者のためにH.P.から抜粋すると――大阪府生まれ。
2007年、『わたくし率 イン 歯一、または世界』で早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞、
08年、『乳と卵』で芥川賞、09年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で中原中也賞、
10年、『ヘヴン』で芸術選奨文部科学大臣新人賞および紫式部文学賞、13年、詩集『水瓶』で高見順賞、
本作で谷崎潤一郎賞、16年、『あこがれ』で渡辺淳一文学賞、19年、『夏物語』で毎日出版文化賞をそれぞれ受賞と華々しい実績です。

【レビュー&エピソード】
再読して収録作のなかで「すてき」と思えたのは、表題作ではなく『日曜日はどこへ』のほうでした。
まず目的地がさびれた植物園であること、次いで主人公が昔の約束を覚えていて、さらにその約束を実行するというプロットにもうやられてしまいました。なぜなら私は昔の約束を記憶していたとしても、「なにをいまさら」と自らが否定し、怖気づいて動こうとしない意気地のない人間だからです。
でも、それは生来のナマケモノ気質もさることながら、きっと裏切られて傷つくのが怖いからにちがいありません。それは……少しは期待しているから……に他ならず……
私はネガティブな気持ちが優先してしまう情けない人間でもあります。でも、自虐の状態のうえでハラハラドキドキしたあげく……うまくいった時のほうが喜びは大きくありませんか?
その効果を最大に引き出したのが、名作映画『幸せの黄色いハンカチ』だと思います(ラストの小道具の演出だけで感涙)。ただ本書のほうは、奇跡も起こらずハッピーエンドにもならない結末で……それが現実というもの。淡々とそれを受け入れる女・主人公はタフで(私もこうありたい)とてもすてきでした。
