【Book review】センセイの鞄
CULTURE
2026.01.09
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“先生”という呼びかけの裏側には恋の呪術が隠れているのです
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『センセイの鞄』
登場するのは市井の人で舞台はほとんど日常
それでも読後感がとっても良い恋物語できました
著 者:川上弘美
出版社:文春文庫
定 価:682円(税込)
2025年はヘブン先生とトキの恋の成就で締めくくられました!……
とすると、朝ドラファン以外は何のことやら……でしょうが(笑)。
現在NHKで放映中の朝の連続テレビ小説「ばけばけ」での小泉八雲(ラフカディオ・ハーン:『怪談』等)とその妻セツをモデルとした
フィクションの物語の昨年最終話(12/26・金)が手をつないで歩くシーンで終わったのです。
紅白歌合戦で「ハンバート ハンバート」の歌で記憶にとどめた人も多いのでは。
このドラマを手掛けた脚本家(ふじきみつ彦)がうまくて結婚することは周知なのに、ずっとハラハラさせてくれました。
史実では八雲41歳セツ23歳、18歳の年の差婚です。1年前に出会った時、ヘブンは品定めをするかのようにトキを見渡し、やれ「手足が太い」だの「抱きたくない」などと言っていたのに……(そこで笑いをとる場面も)。
本書のカップルは主人公のツキコさんが37歳、お相手は30歳超の高校(国語を教わった)教師。
居酒屋で偶然出会い声をかけられたとき、名前が出てこなかったので「センセイ」と呼ぶのです。
朝ドラ「ばけばけ」ではトキはヘブン先生と呼んでいます。
トキには前夫が健在でヘブンには関心薄でしたが……「センセイ」には恋のおまじないの使い方もあるのかもしれません。

【本書のあらすじ】
文庫本の背表紙の紹介には――駅前の居酒屋で高校の恩師と十数年ぶりに再会したツキコさんは、以来、憎まれ口をたたき合いながらセンセイと肴をつつき、酒をたしなみ、キノコ狩や花見、あるいは島へと出かけた。
歳の差を超え、せつない心をたがいにかかえつつ流れてゆく、センセイと私の、ゆったりとした日々。
谷崎潤一郎賞を受賞した名作。解説・木田 元――とあります。

【著者について】
文庫本カバーから抜粋をしますと――川上弘美(かわかみ ひろみ)氏は1958年東京生まれ。
お茶の水女子大学理学部卒業。94年、「神様」で第1回パスカル短篇文学新人賞を受賞。
96年、「蛇を踏む」で第115回芥川賞を受賞。99年、『神様』でBunkamuraドゥ マゴ文学賞、紫式部文学賞、2000年、『溺レる』で伊藤整文学賞、女流文学賞、01年、『センセイの鞄』(本作)で谷崎潤一郎賞、07年、『真鶴』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。
その他著者多数――となります。

【レビュー&エピソード】
小説を読む前に谷口ジロー(故人)の漫画で原作を知ったワタクシ。
著者(川上弘美)の指名で作画担当が決まったそうですが、それまでハードボイルドな話中心で男臭い劇画タッチで人気の谷口ジローはツキコさんの表情のつけ方に苦労したんだとか。
谷口ジローの作画の新境地を開かせたお話といえましょう。成人男性向けの漫画で連載されたことに加え、70歳を過ぎても、はるか年下の女性と深いおつきあいができるという内容に、勇気づけられた世の男性も多いのでは。
本書が受賞した賞の谷崎潤一郎の代表作が『痴人の愛』。
主人公の譲治の相手のナオミは13歳年下。ナオミが15の歳に出会い翌年結婚。さんざん若い嫁に振り回されますが主人公は後悔せず、なにせ痴人ですから。
そんなフィクションを上回り話題を集めたのは、加藤茶(68歳)と綾菜(23歳)の結婚(2011年)。
「事実は小説より奇なり」ということわざはこの結婚のため? 現在も家庭円満。よき、お幸せに‼
