【Book review】貧乏サヴァラン
CULTURE
2025.12.13
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読書からつながる読書は貴重な友人がひとり増えたようなもの
(友だちの輪!)
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『貧乏サヴァラン』
贅沢な心を持つことこそが本当の贅沢だと
人生を楽しみつくした先輩が励ましてくれます
著 者:早川暢子
出版社: ちくま文庫
定 価:660円(税込)
先月読んだ『生まれた時からアルデンテ』(平野紗季子著・文春文庫)にはこんな一節が……
「アンディ・ウォーホルの絵は見られるし、ビートルズの音楽は聴けるけど、50年前のスパゲティを食べることはできない。だから私は本を読む。知らない過去は未来なんだ」とあります。
そして、平野氏から「一行目で死んだと思った」と賛美されたのが本書です。読者も死んだと思うためには、著者とブリア・サヴァランに関しての知識がないとなかなか死ねないのですが……
かくいうワタシも死ねなかったひとり(汗・苦笑)。
森茉莉氏はいわずと知れた明治の文豪・森鴎外の長女、本文1行目でマリアと名乗っています。ブリア・サヴァラン氏は18~19世紀初頭に活躍したフランスの法律家・政治家。かつ美食批評家としても活動しており、亡くなる2ケ月前に出版された『美味礼賛』(1953年/関根秀雄訳)の著者として知られています。
原文の題名にのっとり『味覚の生理学(……そのあとも題名が長々と続くのですが)』と紹介される場合もあるようです。
要は、それなりの地位があって美食家と呼ばれることをよしとするならば、豊かさの代名詞的人物かと思います。それなのに、著者がサヴァランにかかる題名に選んだ言葉は『貧乏』の二文字。平野紗季子氏が心の師匠と仰ぐ理由を本書でつかみたいと思います。

【本書のあらすじ】
文庫本では――家事はまるきり駄目だった茉莉の、ただ一つの例外は料理だった。
オムレット、ボルドオ風茸料理、白魚、独活、柱などの清汁……江戸っ子の舌とパリジェンヌの舌を持ち贅沢をこよなく愛した茉莉ならではの得意料理。
「百円のイングランド製のチョコレートを一日一個買いに行くのを日課」に、食いしん坊茉莉は夢の食卓を思い描く。垂涎の食エッセイ。文庫オリジナル――と紹介。

【著者について】
文庫本のカバーから引用すると――森 茉莉(もり まり)氏は1903年東京生まれ(87年没)。
森鴎外の長女。二度の離婚の後、1957年父を憧憬する娘の感情を繊細な文体で描いた随筆集『父の帽子』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞、50歳を過ぎて作家としてスタート。
著書に『恋人たちの森』(田村俊子賞)『甘い蜜の部屋』(泉鏡花賞)『贅沢貧乏』『森茉莉全集』全8巻など。
早川 暢子(はやかわ のぶこ)氏は、関西エリアの趣味の雑誌『サプライズ』編集の傍ら、「好物」である森茉莉の世界を日々彷徨っている。森茉莉とチョコレート、カフェと本、イギリスをこよなく愛する自称17歳の少女――となります。

【レビュー&エピソード】
森鴎外の娘として、何不自由のない暮らしをしてきた著者。
ですが、お金を使わない生活の楽しみ方を知っていることが……「すばらしい」(『ばけばけ』のヘブン調)。贅沢を知るが故に到達した境地かもしれませんが、皮膚にふれる水(または風呂の湯)をよろこぶべきであると「楽しむ人」というエッセイで乙女たちに訴えます。
平野紗季子氏もこの章絶賛!
文庫の初版は1998年2月。新宿の紀伊国屋書店で見かけた本書は、2023年11月15日発行の第31刷と人気は今も続いています。
