【Book review】小さいわたし
CULTURE
2025.11.08
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小さな自分とぬいぐるみ。一緒に見た不思議な夢の思い出ありませんか?
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『小さいわたし』
すべり台やジャングルジム下の地面を海に見立てて
空の雲で物語を作った頃のトキメキを忘れないで
著 者:益田ミリ
出版社: ポプラ社
定 価:1,540円(税込)
アイドルグループの推しメンならぬ「推ししぬい(ぬいぐるみの略)」活動にいそしむ友人が推してくれたのがこの本です。
本書にぬいぐるみのお話は登場しませんが、小さな自分がぬいぐるみに話しかけて「ごっこ」遊びに興じた頃(「ぬい活」の始まりですね)を思い出して、ほっこりするのだそうです。
では、推しに合わせて私もほっこりさせていただくことにいたしましょう(笑)。

【本書のあらすじ】
著者が小学校に上がった1年間を短いお話(全57話)で綴ったエッセイ集です。
春夏秋冬の季節ごとに分けてありますが、いちばん多いのはやはり春(なんといっても入学式がありますからね)。楽しいエッセイに合わせて著者の本業でもあるかわいいイラストがちりばめられていて(エッセイとは独立したお話としても楽しめます)パラパラと眺めているだけで、誰もが、こんな日があったなぁ、と懐かしい気持ちになれるはずです。
【追加情報】ぬいぐるみがテーマのエッセイはありませんが、ぬいぐるみ(らしきワンちゃん)を持ち上げて「ほんものになったらいいのに」と願っているイラストあり(微笑)。

【著者について】
益田(ますだ)ミリ氏は1969年大阪府生まれ。
イラストレーター。主な著書に、エッセイとしては『おとな小学生』『しあわせしりとり』『永遠のおでかけ』『小さいコトが気になります』など。他にマンガとして『すーちゃん』『沢村さん家のこんな毎日』『マリコ、うまくいくよ』『ミウラさんの友達』『泣き虫チエ子さん』『お茶の時間』『こはる日記』など。
絵本として『はやくはやくっていわないで』など。

【レビュー&エピソード】
本書の発行は2022年、著者が53歳のときです。
幼稚園から小学生に上がる頃をよく覚えていますねぇ……だから「著者の記憶力すごいわ~」が、まず最初の感想。
続いて「いい担任に出会えてよかった~」でした。もちろん著者のお母さん、お父さんも、すばらしいのですけれど(だから、著者のような感受性の豊かな子に育つのですね)。
ピカピカの一年生との表現もあるように、学校での体験は何でもかんでも初めてのことばかり。だから毎日、一日中いくつもの感動があり、この物語が生まれたのでしょうね(私にもあったはずなのに……泣)。
閑話休題。NHKの人気番組「チコちゃんに叱られる!」で『大人になるとあっという間に1年が過ぎるのはなぜ?』という質問で回答者を困らせる放送回がありました(2018年7月20日)。
それに対する正解は『人生にトキメキがなくなったから』でした(解説は千葉大学の一川誠教授)。その理由は、「時間の感じ方には心がどのくらい動いているかが重要で、即ち、トキメキをどのくらい感じるかで時間の流れは変わる」とのこと。
例えば、食事ひとつとっても、子どもは様々な感情が生まれるため、長く感じる(ゆっくり時間が進む)のに対して、大人はただ食事をしただけと感じ、短く(あっという間に)終わってしまう。その積み重ねで時間はどんどん早くなって(感じて)いくのですね。
本書の最後に著者が「人がいきなりおとなに生まれるのだとしたら味気ないにちがいない」と締めくくっています。時間だけは全員みな平等。
大人になっても子どものようなトキメキを見つけて、いくらかでも時間がゆっくり流れる(感じる)ようにしたいものですね。
