【Book review】ステップ

CULTURE

2025.07.04

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新しい生活にはストレスはつきもの。でも、読書でよいストレスに変わります

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『ステップ

あまりに若く妻に先立たれ、男手ひとつで娘を育てる物語。

2歳から12歳に至る軌跡のなかで全員成長していきます

 

著    者:重松清

出版社: 中公文庫

定    価:692円(税込)

 

雑誌『中央公論』での連載をまとめた単行本の発刊は2009年、文庫本では12年、と少し前にはなりますが、直木賞作家の佳作です。

山田孝之主演で映画化(20年)されています。

今回の本選びにあたり、読者の皆さんとお子さんたちが、新生活・新入学の新たな階段を上がっていくのに相応しい題名かな。と思い、ご紹介します。内容的にも、ネガティブにならずにポジティブ思考でいけば、必ずいい方向に向かっていける――と、勇気と元気をもらえる本でもあります。

 

 

【本書のあらすじ】

 

結婚三年目、三十歳という若さで、朋子は逝った。

あまりにもあっけない別れ方だった――男手一つで娘・美紀を育てようと決めた「僕」。

初登園から小学校卒業までの足取りを季節のうつろいとともに切り取る、「のこされた人たち」の成長の物語。――文庫より。

 

 

 

【著者について】

 

重松 清(しげまつ きよし)氏は1963年岡山県生まれ。

早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。

著書に『疾走』『哀愁的東京』『流星ワゴン』『その日のまえに』『きみの友だち』『カシオペアの丘で』『永遠を旅する者』『ブランケット・キャッツ』『とんび』『リビング』など多数。

――文庫本のカバーより。

 

 

【レビュー&エピソード】

 

2007年1月号~09年2月(但し3ケ月に一度のペース)での「中央公論」連載中の題名は『恋まで、あと三歩。』。

書籍化にあたり『ステップ』に改題したわけですが、その理由は、単行本には記載はありませんでした。

このレビューを書くにあたり文庫本で読み直したところ、「文庫版のためのあとがき」に、その答えがありました……お知りになりたい方は……文庫本をぜひ、ご所望ください(笑)。

ところで、そのあとがきでは、著者は執筆にあたり、妻を亡くしたシングルファーザーが子育てに悪戦苦闘しながら、新しい恋に向かって一歩ずつ足を踏み出していく、そんな再出発のドラマを描きたかった、とあります。

と同時に、ひとは「永遠の不在」をどう受け容れていくのかというモティーフが浮かび上がってくればいいと願って書き始めた、とも。

また四季折々の年中行事や季節感が物語の軸になることも多い長期にわたる連載中に、物語の筋立てが揺らぐことはなかったのですが、執筆中に亡くなった妻の実家の存在感が、どんどん増してきた、とも。

ワタクシも「義父と義母がいいひとでよかった。義理の兄夫婦もいいひとたちだなぁ」と、著者が想像するような思いを持ちながら読書を続けた一人です(笑)。

反面、実際にこういうケースでは、こんなにうまくはいかないよね、と思いながらも主人公親娘をはじめ、取り巻くひとたちを応援しながら読了しました。

映画では、義父を國村準、義母を余貴美子が演じています。鑑賞しながら「主役を食う」とは「こういうことかな」と思い、3人の娘役もよくてハッピーエンドに感涙しました。

閑話休題、単行本と文庫本のカバーの表紙ではイラストの絵柄が異なります(両方持っていてもいいですね)。

作画は同じ杉田 比呂美(すぎた ひろみ)氏が担当しています。