【Book review】ミッドナイトバス
CULTURE
2024.10.24
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普通に過ごすってことだけでもこんなに愛おしいドラマがつくれます
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『ミッドナイトバス』
きちんと眠る、家族揃ってごはんを食べる。
深夜高速バスのうたた寝のなかで大事なことに気づきます
著 者:伊吹有喜
出版社: 文春文庫
定 価: 990円(税込)
週刊『女性セブン』の〈新刊紹介と著者インタビュー〉に本作品の著者が登場(‘24年6月13日号)していて面白く一読。
そして、そこからの本来の流れであれば、このコーナーでも最新刊(『娘が巣立つ朝』)を紹介すべきなのでしょうが……そういえば、気になっていた『ミッドナイト・バス』をまだ読んでいないなぁ、ということでまずはこちらをご紹介(ややこしくてスミマセン)。
新宿の紀伊国屋書店で購入した文庫本は2016年8月初版で‘24年5月で第6刷でした。‘18年には映画公開もされていて主役のバス運転手を演じたのは、お笑いトリオ・ネプチューンのボケ担当原田泰造。
笑いのないシリアスな役を見事に演じ切っていました。
【本書のあらすじ】
購入した文庫本のカバーの裏表紙には――「故郷に戻り、深夜バスの運転手として働く利一。
子供たちも独立し、恋人との将来を考え始めた矢先、バスに乗車してきたのは、16年前に別れた妻だった。
会社を辞めた長男、結婚と仕事で揺れる長女。人生の岐路で、忘れていた傷と向き合う家族たち。バスの乗客の人間模様を絡めながら、家族の再出発を描いた感動長編」――とあります。
【著者について】
購入した文庫本にある【著者紹介】に上記の『女性セブン』(‘24年6月13日号)から引用させていただいた内容を加えると――伊吹有喜(いぶき ゆき)氏は1969年三重県生まれ。
中央大学法学部卒業後、出版社勤務を経て、2008年『風待ちのひと』で第3回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞しデビュー。‘10年刊行の長編2作目『四十九日のレシピ』は‘11年にドラマ化、‘13年に映画化。
‘14年刊の本作『ミッドナイト・バス』が第27回山本周五郎賞候補、第151回直木賞候補に。
‘17年刊『彼方の友へ』は第158回直木賞候補、第39回吉川英治文学新人賞候補に。’20年刊『犬がいた季節』が本屋大賞3位になり、第34回山本周五郎賞候補に。同年刊行の『雲を紡ぐ』が第163回直木賞候補となり、第8回高校生直木賞を受賞。他著書多数。――となります。
【レビュー&エピソード】
まずは家ありきで、嫁と姑のいさかいで嫁が逃げ出してしまうというシチュエーションは田舎が舞台のほうがいいのでしょう。
それも、冬はどんよりした天気が続き、雪が重く積もって暗い気分をさらに塞ぎこめさせてしまうようなところが……。
著者は三重県出身ですが、新潟県の細部の描写に狂いなし(というのも私書評子も新潟出身でして)。さぞや執筆前のロケハンも綿密にされたのでは、と感心した次第です。深夜バスも体験されたのかな(私はもちろん経験は十分あります。愛用者ではありませんけれども)。
ところで主人公の利一氏は、妻が泣いているのを見ていながら、実の母親に何も言えなかったり、別居の手段を講じたりとかしなかったのは何故かなぁ、なんて思ったりしました。
せいぜい30年前の出来事ですよね。『犬神家の一族』の時代ではありませんし(笑)。とりあえず妻の実家のある雪の少ない新潟市に移り住めば妻の心も少しは軽くなったのではないかなぁと・・・。
とにかくこの利一氏は何もしないのに勝手にモテるのはよろしくない(苦笑)。「新潟のオトコはモテねぇですて(新潟弁で)」