わたしのマトカ
CULTURE
2021.08.04
著者
片桐はいり
幻冬舎文庫
定価:本体500円+税
マトカとは、フィンランド語で旅。ラジオに出演中のタレント光浦靖子さんが留学するという話のコーナーで、お相手のダビンチ編集長がぜひ読んで、と勧めていました。15年前の初出ですが、いまでももちろん新鮮です。
個性派俳優の片桐はいりさんが映画(「かもめ食堂」)のロケ、北欧フィンランドにひと月ばかり滞在したときの出来事をまとめた初エッセイ集。演技ができる人は、観察力も文章力も優れているんだなぁ、と感心しつつスルスルと頁は進みます。
好奇心に従い躊躇しつつも行動する作者が体験するエピソードはどれも、ほほえましく愉快。ロケ地の首都ヘルシンキの市場のおばちゃんや路面電車の運転士とのやりとりにはほっこりさせられます。女性ひとりでは危険と止められそうなナイトライフにも挑戦。「地獄」という怖そうなバーにもかかわらず、楽しいオチで破顔一笑。撮影が終了した後にも、ひとりで田舎の農場体験をしたり、ムーミンワールド(フィンランドが故郷)を見学したり……。
フィンランド人の気質も含めて、まるまるとかの国の良さが伝わってきて、行きたいなぁという思いが強くなり困ってしまうのです。