【Book review】【源氏物語 1】

CULTURE

2024.02.09

🐉

読書なら1000年前の人たちと対話ができる

🐉

 

 

『源氏物語 1』

教養ではなく私たちの物語になった角田源氏!

1000年前の感情は今につながる

 

著    者: 角田 光代

出版社:河出文庫

定    価: 880円(税込)

 

 

 

書店通いを日課にしている読書家の友人から「装丁が美しい気になる文庫本を見つけた!」との連絡がありましたが、それが本書です。

物語を本にすれば、著者にあたる紫 式部(むらさきしきぶ)を主人公にしたNHK大河ドラマ「光る君へ」が始まることでもあり、友人の読了後に、文庫本を借りて読んでみることにしました。

 

 

【本書のあらすじ】

 

平安時代中期の54帖からなる世界最古の長編小説。

輝く皇子として誕生した光源氏が、数多くの恋と波瀾に満ちた運命に動かされてゆきます。全8巻が予定されており、第1巻は「桐壺」から「末摘花」までが収録されています。

 

 

【著者について】

 

紫 式部(むらさき しきぶ)の生没年は未詳。

たくさんの学者・愛好者が研究を続けていますから、今後、新たな発見があるかもしれません。その研究グループのひとつ、紫式部学会会長の藤原 克己(ふじわら かつみ)氏の巻末の説明によると西暦970年代に生まれたとするのが妥当なようです。

生没年と同じく、平安時代の貴族女性は、男性とは異なり、本名を公けにしない慣習があったので、本名も未詳です。

 

紫 式部は通称となります(現代ならペンネーム?)。2024年1月7日から始まるNHKの大河ドラマ「光る君へ」では、本名を『まひろ』と名乗っています(脚本家の創作)。
「源氏物語」のほかにも、歌人として、百人一首57番「めぐりあひて 見しやそれとも わかぬまに雲がくれにし 夜半の月かな」の作者として広く知られており、「歌集」の他に当時を知る第1級の資料となる「紫式部日記」も残しています。

2000年より発行の二千円札の裏面に紫式部が奥ゆかしく描かれているので、入手したら右下に注目です(笑)。

 

現代語訳にあたった角田 光代(かくた みつよ)氏は、直木賞を含め各賞多数の実力者。本書で読売文学賞を受賞しています。エピソードとして現代語訳の依頼があった際に「なんで?」とご自身は思ったそうですが、聞きつけた人すべてからも「なんで?」と言われたと、あとがきで語られています。
賞をいただくほどの名訳ですから、版元の編集者の読み(期待)通りということになりましょう。

 

 

【レビュー&エピソード】

 

初版の文庫本の帯には「日本文学最大の傑作が、疾走感ある訳文で最後まで読める」とあり、続けて「角田源氏!」の文字が大きく踊っています。

読書家の友人も最初、難解かなと、しり込みしかけたそうですが、なんなく読了。ワタクシ書評子も「」のついた口語調の会話文にも助けられて楽しく読み進むことができました。

光源氏のところに届いた恋文を見たがる下衆な男の話や女の品定めをするような下卑た話を現代口調で挿入されると、今も昔も男どもは……という気分で源氏の世界が身近なものに。

「いい加減な人間ほど、少し知っていることをぜんぶ見せようしますが、困りますな」と書かれていると、えっワタクシのこと? と1000年前の著者に叱られているようです(笑)。

先に読了した友人からは「プレイボーイのモテ遍歴を記したキラキラ宮廷物語! というよりは疫病や生霊や呪いの存在、人の気の移ろいを憂わせるような印象が強く、光源氏にもしっかりと苦労させている」との感想をもらっています。