見た目レシピいかがですか?

CULTURE

2023.02.14

 

 

著    者:椰月美智子

出版社:PHP研究所

定    価:1,650円(税込)

 

 

年の瀬のKindleの検索で、タイトルにつられてピックアップ。

クリスマスや正月のパーティで映える料理のレシピ本かなと思ったのです。

ひと目で内容やボリュームが伝わる書物ではありえない勘違いです(笑)。

 

題名の「見た目」とは人の外見のこと。

「馬子にも衣装」の衣装のほうです。

近年に「人は見た目が9割」というヒット本もあります。

但し、この本で登場するイメージコンサルタントの女性は、衣装のチカラで実際よりも立派に見せようとするのではなく、誰しもその人ならではの魅力を伝えるファッションやメークがあることを教えようとします。

自分をもっと知れば、人生が変わるかもしれない。

そのアドバイスをレシピと呼んでいるのです。

 

 

 

 

【本書のあらすじ】

 

口コミだけで顧客が広がる、魅力いっぱいのイメージコンサルタント・御手洗繭子。

あなたの見た目はいままで以上によくなりますと、彼女の関係したエピソードを集めた連作短編集。

アドバイスを受けた4人の外見と内面はどんな変化をしたのでしょうか?

生活感も十分描かれ、隣家をのぞくような気分です。

 

1話めの純代の場合は、娘から「参観日にお母さんが一番ダサかった」と言われ……。

 

2話の、あかねは、不倫相手の「私服がカッコ悪くて」許せなくなって……とコンサル。

 

3話の美波は、自分がこんなかわいらしい服を着てもいいのだろうか……と疑心暗鬼に。

 

最後は、繭子本人の話を。的確なアドバイスを下す彼女の抱える問題とは……いったい?

 

各自さまざまな事情を抱えるなかで「きれいになりたい」「自分らしくなりたい」と思う女性の心理を、鋭くかつ細やかに描いています。

 

 

【作者について】

 

椰月 美智子(やつき みちこ)氏は1970年生まれで神奈川県小田原市在住。

2002年に『十二歳』で第42回講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。

『しずかな日々』で第45回野間児童文芸賞と第23回坪田譲治文学賞をダブル受賞。

2020年に『昔はおれと同い年だった田中さんとの友情』で第69回小学館児童出版文化賞を受賞。

既婚。二児の母。

 

 

【舞台&背景】

 

現代のお話で、特定の場所を想像するより、いわゆるフツーの町でよく起こっていること、

と捕えたほうが重要で、共感が増します。

 

思春期の親子関係、PTAの人間関係、ちょっとした遊び心での愛人関係、パートやアルバイトもふくめた仕事関係と、様々な関係が入り混じるなかで、妬みや羨望、自虐や蔑みなど泥臭い感情が登場人物を揺り動かします。

 

 

【レビュー&エピソード】

 

繭子がイメージコンサルタントになるまでの過程が第4話で幼少期から克明に記されます。

1~3話までのコンサルされる側の女性は、庶民のエピソードを持ち合わせていて、あるある感やダメダメ感もたっぷり。

 

一方、繭子は彼女なりの苦労はあったでしょうが、それなりの家柄らしく、それなりのキャリアを積んで、それなりのセレブな暮らしと、1~3話までの女性とは少し違います。

でもブランド提案ではなくて、あくまでもお似合いのカラーコーディネートを中心に。

ファストブランドも範疇に入れて、ファッションを楽しみましょうとする姿勢には好感が持てます。