掃除婦のための手引き書 ―― ルシア・ベルリン作品集
CULTURE
2022.10.16
著者:ルシア・ベルリン / 訳:岸本佐知子
出版社:講談社
定価:990円(税込)
紙巻きタバコを指に挟んだカバー写真の著者ルシア・ベルリンは、1936年アラスカ生まれ。
鉱山技師だった父の仕事の関係で鉱山町を転々とし、幼少期は脊柱彎曲症の矯正ギブスでいじめを受け、成長期になると南米のチリで最下層の人々と交わりながら豪邸でお姫様のように過ごします。
成人後は3回の結婚と離婚を経て、4人の息子を育てるシングルマザーに。職業も学校教師、看護助手など転々とし、作品タイトルの掃除婦も経験しています。
また作品のキーワードのひとつが「アルコール中毒」ですが、これも著者本人が実際に苦しんでいます。
波乱万丈な実体験を基に、著者は生涯で76の短編を残していますが、本書に収められているのは24作品。どれも文章が短くて、女性の書き手なのにハードボイルドな匂いがプンプンします。
カバーでは本国アメリカで死後10年を経て再発見された「奇跡の作家」と紹介。
あとがきでは、翻訳者が20年前に読んで熱望したとあって、訳に力の入った気の利いたフレーズが目白押し。
2020年の本屋大賞で翻訳小説部門2位、Twitter文学賞では海外編で堂々の第1位。名作と名訳に両方酔えます😊