三千円の使いかた

CULTURE

2022.08.14

三千円の使いかた

 

 

著者:原田ひ香

出版社:中央公論新社

定価:770 円(税込)

 

 

2022年6月17日をもって27年間の営業を終える書店「文教堂 赤坂店」の文庫コーナーでいちばん平積みされていたので購入しました。閑話休題、赤坂にはこれで書店が一件もなくなります。たいへん寂しい限りです。

 

さて、タイトルが意味深ですが、物語の主人公のおばぁちゃんのひと言。時代設定は現在の東京。母娘三世代それぞれのお金が絡む諸事情を物語にした連作短編集です。

 

但し、物語の鍵がお金になるとはいえ、登場人物はいずれも食うや食わずの貧困に苦しんでいるわけではなく、お金目当てで悪知恵を働かせるでもありません。ささやかな庶民の悩みをもとにドラマが繰り広げられます。

 

それだから親近感がわくのでしょうか、いえいえ、作家の力量のなせるワザなのでしょうけれど、最後まで一気に楽しく読めました。

 

ところで、この読後感は作中にも登場する、ふつうの奥さんを取材先とした節約雑誌に似ています。小さなお子さんがいて働きに出られない奥さんがやりくりを重ね家計を支えている姿は、まさに我が家のヒーロー。

身近で子細なことゆえの驚きと感動があります。3000円はやりくりにとっては大きな金額なのです。