【Book review】一次元の挿し木
CULTURE
2026.10.28
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素性の知らない人の正体が明らかになるところも友達づくりみたいで面白い
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『一次元の挿し木』
園芸関係の本かな、と見間違える人はいないはずですが
挿し木はクローンづくりの手法のひとつです
著 者:松下龍之介
出版社: 宝島社文庫
定 価:900円(税込)
紫陽花(アジサイ)が見ごろな時期に調布市の神代植物公園(住所は深大寺です。アジサイは約130種・500株あるそうな)を訪れました。
帰りにJR武蔵境駅脇の文教堂に立ち寄ったところ本書を目にしました。ちょうど「ガクアジサイでは、装飾花(花びらに見える部分)が上向きから下向きに変わったら花が終わったサインなんですよ」と教わったばかりでもあったので、カバーの紫陽花が目に飛び込んできた次第。
花の後ろにある人骨が意味深でした。「このミステリーがすごい! 大賞」も受賞したのですね。購入した文庫は9刷でオビには50万部突破とあります。
2025年もっとも売れた新人作家ともあり、遅ればせながら(大汗)、ご紹介いたします。

【本書のあらすじ】
カバーには――ヒマラヤ山中で発掘された二百年前の人骨。大学院で遺伝人類学を学ぶ悠がDNA鑑定にかけると、四年前に失踪した妹のものと一致した。
不可解な鑑定結果を担当教授の石見崎に相談しようとした矢先、石見崎は何者かに殺害された。古人骨発掘した調査員も襲われ、研究室から古人骨も盗まれた。
悠は妹の生死と、古人骨のDNAの真相を突き止めるべく動き出すが、予想もつかない大きな企みに巻き込まれていく――と、ミステリーらしく謎めいた表現で読者を誘います。

【著者について】
文庫の紹介によると――松下龍之介(まつした りゅうのすけ) 氏は、1991年生まれ。
千葉工業大学大学院工学研究科修士課程終了。現在は機械システム事業を扱う会社で、火力発電所や製鉄所向けの高圧ポンプの設計や技術提案に携わっている。
第23回『このミステリーがすごい!』大賞・文庫グランプリを受賞し、本作でデビュー――とあります。

【レビュー&エピソード】
題名の『一次元の挿し木』の説明は文庫のどこにも見当たらなかったの(はず)ですが次元の捉え方なら、『一次元』は一本の線上ということですね(0次元は点、二次元は面、三次元は立体)。
『挿し木』とは(雌雄の)交配を必要としない植物ならではの繁殖方法でアジサイも簡単に増やすことができます。
メリットは気に入った形状の花をそっくりそのまま(その木ならではの性質すべてを)増やしていけることにあります。漫画『パーマン』のコピーロボットのようなものですね。
ただし、コピーロボットは1体ですが、挿し木ならひと株から5本とったら5つの同一の花を咲かせるアジサイを手に入れることになります。
同じ色、形で同じ時期に花が咲くアジサイの花壇ができるわけですね。このような同じ遺伝情報を持つ個体を生物学用語でクローンと呼ぶことは、ご存じの通り。
ただし挿し木という手段でクローンをつくることは一般的でも、特定の人間と同じ遺伝情報を持つ「クローン人間」を作ることは法律で禁止されています(「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」2001年6月施行)。
そういう法律が施行されているということは技術的には不可能ではないということ……?
謎解きのヒントはミステリーなのでそのくらいにして(汗)。読んでみての感想は、場面が切り替わるテンポが良くて、移動中の車中読書でキリよく読めました。
日テレ系で山田涼介主演のドラマも始まっていますね。
