【Book review】私家版 かげろふ日記
CULTURE
2025.01.09
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書くことで穏やかになれると1000年前の日記の記述にもあります
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『私家版 かげろふ日記』
夫の浮気癖と婦人の嫉妬は1000年前も変わらず
ご近所のご夫婦のいざこざを覗いているようでニヤリ
著 者:杉本苑子
出版社: 講談社文庫
定 価: 681円(税込)
昨年のNHK大河ドラマ「光る君へ」。年初の放送回のひとつに、『蜻蛉(かげろう)日記』が話題となった回がありました。
作者は、藤原道長(ふじわらのみちなが)の父・兼家(かねいえ)の妾(側室)の一人、藤原倫寧女(ともやすのむすめ)です。
彼女は、藤原道綱(みちつな)の母とも称されています。ドラマでは、財前直美が演じていましたね。夫の兼家は段田安則、道綱は上池雄輔、時の最高権力者に昇り詰める道長には、ご存じ柄本佑です。
NHKの公式サイト・ステラnetの『蜻蛉日記』の紹介では、多情な兼家とのモヤモヤを赤裸々に綴っているところから、主婦による“暴露系手記作品”の元祖とあります。
また、「『蜻蛉日記』は『源氏物語』の成立を促した作品とも言える」との記述が。
これはぜひ読んでみたいと思ったのですが、古典の授業を思い出して、しばし躊躇(教科書のような訳ではねぇ……)。
でも、そんな私の背中を押してくれる有名女流作家の「私家版」と称する超(?)訳本を見つけました!
スラスラ読めて主人公の気持ちに共感でき、かつ面白かったので、コレだ! と“押し活”します。
【本書のあらすじ】
発行元(講談社)のH.P.の紹介では――
「私は身分違いの相手に想われ、玉の輿に乗った女である。」……並外れた美貌と作家の才に恵まれた平安朝の一女性が、浮気の絶えない夫との生活から女同士の確執、一人息子への溺愛ぶりまで赤裸々に綴る。
無類に面白い千年前の記録を、大胆かつしなやかな日本語で生き生きと再現させた現代人必読の書。
平安朝日記文学の傑作を、しなやかで優美な現代語で甦(よみがえ)らせた名篇。女の人生、夫次第。古典のおもしろさ、新発見!
――とあります。
【著者について】
杉本 苑子(すぎもと そのこ)氏は1925年東京都生まれ。
旧制千代田女子専門学校(現武蔵野大学)、文化学院卒業。1952年、週刊誌『サンデー毎日』の懸賞小説に入選しデビュー。
’62年、『孤愁の岸』で第48回直木賞を受賞。
以後、歴史小説家として活躍され、91歳(2017年)でお亡くなりになっています。
【レビュー&エピソード】
著者の名訳のおかげで千年前の上流階級に属する女性の世の中の見方や感情がいきいきと伝わってきます。
平たくいうと、お高くとまった貴婦人の裏の顔が見えて面白い(笑)。
日記という実録もので、作り話ではないことがわかっているので尚更です。
日記に綴られているのは、19歳から39歳までの記録。求婚、結婚、出産、子育て、と男女&夫婦の関係が軸となります。
自らを「三大美人」の一人と称し、玉の輿に乗るのは当たり前、と自信満々なのは、現代の年頃の女性にも通ずるところがあろうかと。
また夫の浮気に対しての悩みや浮気相手への嫉妬も現代の人生相談を読んだり聞いたりしているようです。
ただ当時の男女がモテる条件としては、容姿はともかく(夜は照明もほとんどないうえでの通い婚)和歌の素養が不可欠でした。文化度は当時のほうが上かも……ですね(笑)。