【Book review】よって件のごとし~三島屋変調百物語八之続~
CULTURE
2024.10.17
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秋の夜長にほっこり怪談はいかがでしょう・・・?
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『よって件のごとし~三島屋変調百物語八之続~』
舞台はお江戸。シリーズ最新作がお待たせの文庫化
怪談なのに人情味もたっぷり味わえ、ほっこりもします
著 者:宮部みゆき
出版社:KADOKAWA/角川文庫
定 価: 1,056円(税込)
タイトルの「件」は「くだん」と読みます。
単行本は2022年7月発行。単行本とは表紙のデザインが異なる文庫本を、待ちあわせ場所に使った飯田橋駅隣接ビル2階の芳進堂で購入しました(飯田橋店での売れ行き第3位)。
というのも、待ちあわせの相手がなかなか現れなかったのです。そんな時、本屋さんって最高だなって思いませんか。雑誌の表紙を眺めているだけで、いろいろなジャンルの最新トレンドや人気のニュースの深堀り記事の見出しを知ることができます。
書棚に連なる本の背表紙からは、たくさんの物語が「読んで読んで」と訴えてきているようで、ワクワクというかクラクラするほど。待ちぼうけのブルーな気持ちも一掃されるというものです。
オビのキャッチコピーは「凶事(まがごと)は、語って消し去りましょう。」とあり、背の部分には「どこからでも楽しめる江戸怪談!」と書棚の前の読者にアピールしています。
【本書のあらすじ】
著者創作の怪談話はシリ―ズ化していて最新作(本年6月25日発行)の本書は第8冊。
文庫本のカバーでは、このように紹介――。江戸は神田の袋物屋・三島屋は風変りな百物語で知られている。語り手一人に聞き手も一人。
話はけっして外には漏らさない。聞き手を務める小旦那の富次郎は、従妹である、おちかのお産に備え、百物語をしばらく休むことに決めた。休止前最後に語り手となったのは、不可思議な様子の夫婦。語られたのは、かつて村を喰い尽くした〈ひとでなし〉という化け物の話だった。
どこから読んでも面白い! 宮部みゆき流の江戸怪談。
【著者について】
1960年東京生まれ。東京都立墨田川高校卒業。
法律事務所等に勤務の後、87年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞してデビュー。92年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞長編部門、『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞、93年『火車』で山本周五郎賞、97年『蒲生邸事件』で日本SF大賞、99年『理由』で直木賞、2001年『模倣犯』で毎日出版文化賞特別賞を受賞。
02年司馬遼太郎賞と芸術選奨文部科学大臣賞文学部門、07年『名もなき毒』で吉川英治文学賞、08年英訳版『BRAVE STORY』でBatchelder Award、22年菊池寛賞を受賞――文庫本の著者紹介より。
【レビュー&エピソード】
日常で嫌なことや失敗談は、隠しておけず他人に話したくなったりしませんか(愚痴やボヤキもその類でしょうか? 笑)。口に出すとスッキリするからですが、聞き手がいてからこそ、なので聞くチカラも重要です。
きっと富次郎はかなりの聞き上手なのでしょう。カバーで紹介されていた〈ひとでなし〉の話(本の題名と同じ「よって件のごとし」)は、3話収録の本書の最後の物語でシリーズ第37話目。
いわゆるゾンビものです。
馴染みはある題材ですが、ワタクシにはちょいと食傷気味。代わりに2話目の「土鍋女房」が良かったですね。オリジナリティに溢れていて滑稽味も加わった人情噺でもあり、落語で聞いてみたいなぁ、なんて思ったのです(笑)。