【Book review】ミステリという勿れ(前・後編)
CULTURE
2024.03.14
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『ミステリという勿れ(前・後編)』
「真実は人の数だけある」――謎解きだけではない
含蓄のある主人公のセリフが胸を打ちます。
著 者:豊田 美加
脚 本:相沢 友子
原 作:田村 由美
出版社:小学館文庫
定 価: (前編後編とも)748円(税込)
「ノベライズ(novelize)」って、ご存じでしたか? 小学館のデジタル大辞泉には、「ヒットした映画やテレビドラマのシナリオを小説化すること」とあります。
同じ小学館から出ている文庫本で、帯には大きく「ドラマ完全ノベライズ!」と謳われた物語を、読書家の友人から勧められました。
それがこの『ミステリという勿れ』です。‘22年のフジテレビの月9枠で放送された全12話のドラマ(平均視聴率11.8%)で、その後、特別編のほか、昨年(‘23)9月には映画版も上映しています(動員310万人超えの大ヒット)。
そのドラマの脚本を担当されたのは相沢友子氏、さらにその原作は漫画作品で、そちらの作者は田村由美氏となります。本書のクレジットが3名になるのは、そんな理由からです。
原作となる漫画も小学館から13巻出されていてH.Pには累計1800万部とあります。タイトルの「勿れ(なかれ)」とは「なし」の命令形。
してはいけない。するな(デジタル大辞泉)。本書の分類はミステリなのですが、原作者の意向(「そうではない」)が反映されているのだとか(とっくにご存じのファンの多くの皆さま、今更で申し訳ありません)。
【本書のあらすじ】
主人公の久能 整(くのう ととのう)は、天然パーマのもじゃもじゃ頭がトレードマークの大学生。
人づきあいは少ないが好きなカレーを作ったり、趣味の絵画鑑賞や読書を楽しんだりと、マイペースな大学生を送っている(文庫掲載の「あらすじ」より)。
主人公は頭髪が特徴ながらも、どこにでもいる平凡な大学生のように見受けられます。ところが、事件に巻き込まれるとたちまち一変、非凡な才能(推理)を発揮し始めます。推理の仕方はとても特徴的で、事件現場に出向くことなく、関係者の話を傾聴し、身なりや仕草を注意深く観察することで、事実を読み解いていくのです。
冒頭、容疑者扱いにされていた主人公は、ついには、警察から頼りにされる存在になっていきます(その過程が痛快!)。
【著者について】
豊田 美加(とよだ みか)氏は大分県生まれ。成蹊大学文学部卒業。
オリジナル小説『病名のない診察室』『台南の空ゆかば~ボクとうさぎのマンゴーデイズ』のほか、ノベライズ作品も多く、「SPEC」シリーズをはじめ『小説 カノジョは嘘を愛しすぎてる』『小説 心が叫びたがってるんだ。』『燈火 風の盆』『小説 孤狼の血LEVEL2』
大河ドラマ『青天を衝け』など幅広いジャンルで活躍中。
【レビュー&エピソード】
どの話も、ひとつの事件が解決すると、次の事件(次回のドラマ)の前振りが加わります(翌週の放送に視聴者をつなげるテク)。
1話ごとのタイトルはなく、放送回数の順番のみが目次と扉にふられます。
元の脚本という形式(出演者のセリフとカメラや裏方にも場面を理解させるシーンナンバーあるト書き)ではなく、小説の形に変えてあるので、主人公からの視点によってシーンが描かれ、主人公の心象もよく伝わります。
ドラマの出演者をイメージ(主人公は菅田将暉)して読めば、各回の名シーンと名言が蘇ってきます。