【Book review】平家物語を旅しよう
CULTURE
2024.01.12
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読書なら1000年前の人たちと対話ができる
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『平家物語を旅しよう』
平家物語の広い舞台を歴史作家と旅する気持ちになれば
物語をちがった角度で楽しむことができます
著 者: 永井 路子
出版社:講談社文庫
定 価: 628円(税込)
「源氏物語」の時代(平安の貴族社会)を描く大河ドラマ「光る君へ」が話題です。
平安時代を描く―とくれば、源氏物語の300年後(鎌倉時代)に誕生した平家物語があります。
こちらは貴族内部の人間関係ではなく、平家と源氏の対立を描く軍記ものですね(いまさらではありますが)。冒頭文の「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす……」は、学校の授業で暗記させられた方も多いのでは。
軍記ものですが、武士の活躍の裏で描かれる女性たちの悲哀も魅力です(これもいまさら)。このよく知られている物語を歴史作家の大御所が平家ゆかりの地を訪れながら、何を思うかが本書の試みといえます。
【本書のあらすじ】
熊野・住吉を訪ねて、平 重盛(たいらのしげもり)の栄華の中の空しさを、宇治・冨士に平 維盛(たいらのこれもり)の運命を、宮島・屋島そして大原に流転の王妃建礼門院(けんれいもんいん=平徳子・たいらのとくこ)の悲しみを知る。
琵琶法師に導かれて、日本人の心を訪ねよう。
―講談社文庫の内容紹介から一部抜粋。※読み方を加えました。
【著者について】
永井 路子(ながい みちこ)氏は1925年、東京都生まれ。
3歳で茨城県古河市に転居し、当地で育ちます(古河市の名誉市民)。
東京女子大学卒業後、結婚を機に東京に移り、同年に出版社の小学館に入社し、雑誌の編集に関わりながら歴史小説を書き始めます。1961年に12年間勤めた小学館を退社し、執筆に専念。
その3年後の’64年『炎環』で直木賞を受賞。’82年『氷輪』で女流文学賞、’88年『雲と風と』ほかで吉川英治文学賞、’09年『岩倉具視』で毎日芸術賞を受賞するなど、長きに渡り多くの名著を執筆され、2023年1月に97歳でお亡くなりになりました。
【舞台&背景】
重森の編では京都が舞台。平家の住居は六波羅(ろくはら)と西八条(にしはちじょう)にあったといわれています。
紀伊半島の南端部の熊野も関係が深く、いくつかのエピソードが紹介されます。戦争非体験者である重森の子、維盛の敗走のシーン各所と叔父にあたる重衡(しげひら)の最後の場所も。
そしてエンディングは壇ノ浦の合戦に係わる名所旧跡や、生き残って僧となった建礼門院の余生を過ごした庵室などを訪れます。
【レビュー&エピソード】
本書の序章で著者が真っ先に「なんと手垢にまみれた古典だろう」と記述したあと「なんと玲瓏(れいろう)たる姿を保ち続けてきた古典だろう」と、玉のように美しい作品であることを褒めたたえています。
また「平家物語」を知っている人は「源氏物語」愛好家の10倍、100倍、いや1000倍と記されます。とはいえ「諸行無常……」は唱えられても、あらましとなると、不安になる人は多いのでは? (ワタクシもそのひとり:汗)
本書のような、いわば解説本から平家の世界に入っていく方法もとっつきやすくてアリかな?なんて思います。
旅のお供にすれば訪問先の楽しみが広がり、そして深まりますしね😊